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財政学9租税(3)所得税(22016610日(金) 担当:天羽正継(経済学部経済学科准教授) 1

1 第9回 租税(3)所得税(2 2016年6月10日(金)財政学 Ⅰ 第 9 回 租税(3)所得税(2) 2016 年 6月10日(金) 担当:天羽正継(経済学部経済学科准教授)

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Page 1: 1 第9回 租税(3)所得税(2 2016年6月10日(金)財政学 Ⅰ 第 9 回 租税(3)所得税(2) 2016 年 6月10日(金) 担当:天羽正継(経済学部経済学科准教授)

財政学Ⅰ 第9回 租税(3)所得税(2) 2016年6月10日(金) 担当:天羽正継(経済学部経済学科准教授)

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Page 2: 1 第9回 租税(3)所得税(2 2016年6月10日(金)財政学 Ⅰ 第 9 回 租税(3)所得税(2) 2016 年 6月10日(金) 担当:天羽正継(経済学部経済学科准教授)

所得税の課税単位(1) 課税対象となる所得は個人単位で捉えるべきか、世帯単位で捉えるべきか(課税単位(tax unit)の問題)。

A・BおよびC・Dという二組のカップルが、結婚して夫婦になるケースを想定(スライド3)。 A・Bは片稼ぎ世帯で、C・Dは共働き世帯。所得税は、60万円までの所得には10%の、60万円を超える所得には50%の累進税率が適用される。

個人単位で課税する場合は、結婚しても租税負担額は変わらない((2)欄と(4)欄を比較)。ただし、 A・BとC・Dは世帯としての所得額が同じであるにもかかわらず、租税負担額は異なる( (4)欄)。

A・BはC・Dよりも、低い累進税率が適用される所得額が小さく、 高い累進税率が適用される所得額が大きいため。

課税単位を個人から世帯に変更して、夫婦の所得を合算した金額に対して課税した場合には、 A・BとC・Dは世帯としての所得が同じであるため、租税負担額も同じ( (5)欄) 。

しかし、高い累進税率が適用される所得額が大きくなるため、個人単位の場合よりも租税負担額は大きくなる((4)欄と(5)欄を比較)(結婚への刑罰)。

「結婚への刑罰」を避けるため、二分二乗制を導入。夫妻の所得を合算した後、それを二等分する。二等分された所得それぞれに累進税率を適用して税額を算出し、それらを再度合算して納税額を求める。その結果、合算しただけの場合よりも租税負担額は小さくなる((5)欄と(6)欄を比較) 。

夫婦の所得額が同じC・Dは、個人単位課税の場合と租税負担額は変わらない( (4)欄と(6)欄を比較)。

夫婦だけでなく、すべての家族を考慮するN分N乗制もある。

日本を含め、世界的には個人単位課税が主流(スライド4)。

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所得税の課税単位(2) 3

課税単位の数値例 (単位:万円)A B C D

(1)所得 10 290 150 150(2)税額 1 121 51 51(3)所得(4)税額(個人単位)(5)税額(世帯単位・夫婦合算)(6)税額(世帯単位・二分二乗制)

注:60万円までの所得には10%の、60万円を超える所得には50%の累進税率を適用。

出所:持田信樹『財政学』139ページに一部修正。

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単身者

夫婦世帯

300 300122 102126 126102

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所得税の課税単位(3) 4

課税単位の類型 (2015年1月現在)考え方

 稼得者個人を課税単位とし、稼得者ごとに税率表を適用する。(実施国:日本、イギリス。アメリカ、ドイツは選択制)

○独身者と夫婦に対して同一の税率表を適用する単一税率表制度(実施国:ドイツ)

(実施国:フランス(家族除数制度)) 夫婦を課税単位として、夫婦の所得を合算し非分割課税を行う。

注1:イギリスは、1990年4月6日以降、合算非分割課税から個人単位の課税に移行した。

注2:アメリカ、ドイツでは、夫婦単位と個人単位との選択制となっている。

出所:財務省ホームページ(http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/income/029.htm)

 夫婦を課税単位として、夫婦の所得を合算し均等分割(二分二乗)課税を行う。具体的な課税方式としては、次の通り。

○異なる税率表を適用する複数税率表制度(実施国:アメリカ(夫婦共同申告について夫婦個別申告の所得のブラケットを2倍にしたブラケットの税率表を適用した実質的な二分二乗制度))

不均等分割法(N分N乗)

 夫婦及び子供(家族)を課税単位とし、世帯員の所得を合算し、不均等分割(N分N乗)課税を行う。

合算非分割課税

類型

個人単位

夫婦単位又は世帯単位

合算分割課税

均等分割法(二分二乗課税)

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所得税の国際比較(1)

税率の引下げ、ブラケット数の減少、各種控除の拡充、金融所得の分離課税等により、日本の所得税が税収に占める割合は近年低下しており、他の先進諸国を下回る(スライド6)。 国民所得に占める割合も低下し、地方税を含めても他の先進諸国を下回る。

最高税率、最低税率ともに低下。特に、最高税率は70%という高率からの低下。

給与所得に対する所得税負担額も、他の先進諸国と比較して小さい(スライド7)。

日本では8割以上の納税者が、10%以下の低い税率を課されている(スライド8)。 その結果、他の先進諸国と比較して税収調達能力が低くなっている。

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所得税の国際比較(2) 6

(1986年度) (2013年度)(連邦)74.5%9.8%

[9.0%] [8.1%] [12.8%]最低税率(所得税) 10.5% 5.0% 10.0% 20.0% 0.0% 0.0%最高税率(所得税) 70.0% 45.0% 39.6% 45.0% 45.0%[地方税等を含めた場合] [78.0%] [55.0%] [約52.3%] [47.475%] [53.0%]

15 7 7 5[14] [1] [8, 5] [1]

出所:財務省ホームページ(http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/income/027.htm)

税率45%

税率の刻み数3 -

[地方税等の税率の刻み数]

国民所得に占める個人所得課税(国税)負担割合

6.3% 4.0%12.3%

10.7%12.0%[含む州・地方政

府 12.4%][地方税を含めた場合]

ドイツ フランス

国税収入に占める個人所得課税(国税)収入の割合

39.3% 30.3% 36.3% 40.4% 37.1%

個人所得課税の国際比較日本

アメリカ イギリス

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所得税の国際比較(3) 7

給与収入階級別の個人所得課税負担額の国際比較 (2016年1月現在)

出所:財務省ホームページ(http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/income/028.htm)

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所得税の国際比較(4) 8

出所:政府税制調査会(2015年10月14日)財務省説明資料(http://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/zeicho/2015/__icsFiles/afieldfile/2015/10/19/27zen23kai3.pdf)