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ICT活用型防災教育マニュアル -災害に強いかながわをめざして- 東海大学

ICT活用型防災教育マニュアル - WordPress.com · 2019. 8. 20. · 同平塚中等教育学校、秦野市立南が丘中学校 ... ここ数年の間に発生した大規模災害、例えば2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震、

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ICT活用型防災教育マニュアル

-災害に強いかながわをめざして-

東海大学

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日本では、毎年様々な大規模自然災害が発生していますが、被害を軽減することを目的として、日本各地の学校で様々な形の防災教育が実施されています。東日本大震災では、防災教育の効果により適切な避難行動(津波てんでんこ)を取ることができた学校の事例がありました。一方で若い人たちの防災意識が他の年代層と比較して低いことが各種調査で明らかになっています。東海大学は、神奈川県内の中高生の皆さんの防災意識を高めることを目的として、ICT活用型防災ワークショップを神奈川県と共同で2017~2018年度の2年間、合計10校で開催しました。この冊子は、その成果をもとに作成されました。若い人達の防災意識向上につながれば幸いです。最後に、防災ワークショップの実施にご協力いただきました神奈川県立平塚商業高等学校、同横須賀大津高等学校、同西湘高等学校、同秦野高等学校、同金沢総合高等学校、同相模原中等教育学校、同平塚中等教育学校、秦野市立南が丘中学校、川崎市立西生田中学校、相模原市立藤野中学校の先生方、生徒の皆様に感謝申し上げます。

2019年3月東海大学情報理工学部情報科学科

内田 理

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災害が発生した時に被害を最小限に抑えるためには、迅速、かつ的確な情報の収集や伝達・共有が極めて重要です。そのため、災害時にインターネット、特にSNSを活用するケースが増えています。日本ではリアルタイム性が高く利用者が多いという特徴を持つTwitterを災害時に活用しようという動きが活発です。ここ数年の間に発生した大規模災害、例えば2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震、2017年の九州北部豪雨、そして2018年6月の大阪北部地震や7月の西日本豪雨(平成30年7月豪雨)などの発生時に被害状況の発信や共有、情報収集にTwitterが活発に利用されたことが知られています。災害時に自分の周囲がどのような状況であるか、例えば「電車が止まっている」「停電していて交差点の信号機が消えている」「道路が冠水して車の通行が困難である」「けがをしている人がいる」などの情報をスマートフォンなどからSNSに投稿することは多くの人の役に立つ可能性があります。自分の安全が確保され、危険が迫っていない場合には、災害の状況をSNSに投稿することを検討してみましょう。ただし、情報を投稿する際にいくつかの注意事項があります。

1. その情報が「どこ」の情報であるかがわかるように、住所や近くの施設の名前などを書きましょう。

2. なるべく具体的に状況を書きましょう。

3. 文章だけでは状況を正しく伝えることが難しい場合もあるので、できれば写真を付けましょう。

4. 自分の安全が第一。危険な場所に近づくのは絶対にやめましょう。

道路が陥没しています

かながわ太郎 2019年4月〇日 15:35

災害時のSNS活用

〇〇市の△△高校玄関前の道路、陥没していて

車が通れません

かながわ太郎 2019年4月〇日 15:35

危険な場所には近づかないようにしましょう

場所がわかるようにするなるべく具体的に ・できれば写真付きで

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Twitterを利用した災害情報共有システム DITS・DIMS

2ページに書かれているとおり、災害情報をSNSに投稿する場合には場所に関する情報を記載することが望ましいですが、投稿時に自分がどこにいるかわからないような状況も想定されます。東海大学では、住所とハッシュタグ(#〇〇市災害)を自動的にツイート内に挿入するTwitterアプリDITS (Disaster

Information Tweeting System) を開発しました。ツイッターのアカウントを持っている人であれば誰でも無料で利用できます。また、DITSで投稿された情報は、DIMS (Disaster Information Mapping System) を利用して地図上で確認できます。

1. WEBブラウザで

http://saigai.main.jpにアクセスし、DITS災害報告の

「次へ」を押してください。

2. Twitterのユーザー名とパスワードを入力し、「ログイン」ボタン

を押してください。(2回目以降は

省略される場合があります)

3. 状況に応じて各ボタンを押し

てください。

4. 「災害状況を報告してください」

の下の欄(テキストボックス)に

伝えたい内容を入力してください。

5. 3で写真の添付を選んだ場合は「写真を選択」を押して添付す

る写真を選んでください。

6. ツイートに成功すると上の画面が表示されます。「トップページ

へ戻る」を押すことにより、1の画

面に戻れます。

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DITS・DIMSを利用した防災ワークショップ (1)

3ページで災害情報共有システムDITS・DIMSを紹介しました。ここでは、DITS・DIMSを利用した「ICT活用型」防災ワークショップの実施方法を紹介します。(DITS・DIMSは災害時に使うことを目的としたシステムですが、本ワークショップではまち歩きのツールとして利用します)防災教育は様々な観点で実施することが望ましいですが、このワークショップではまず「災害・防災という観点でまちを知る」ことを目的としてまち歩きを実施します。具体的には、「災害・防災という観点で重要であるものや危険な場所をみつけ、DITSでその写真を投稿する」ことを学校近隣で行います。まち歩きが終わったら、教室でDIMSを用いてふり返りを行い、最後に各グループからの報告を実施して各グループが出した結論を共有します。

スケジュール案 〔全体で100分間〕

① 【20分間】 準備・趣旨の説明、防災・減災全般に関する講義。・「Twitterを利用した災害情報共有システム(DITS・DIMS)」の概要、利用方法の説明。テスト投稿。

② 【45分間】まち歩き (5~10名程度のグループで実施)・DITSを使い、災害・防災の観点で気になる場所・ものを投稿する。(5ページ参照)

③ 【15分間】 ふり返り・議論・DIMSを使って自分たちの投稿内容をふり返る。(6ページ参照)

④ 【10分間】 各グループからの報告・③での議論の内容、結論を各グループの代表者が報告する。

⑤ 【10分間】 まとめ・活動の総括を行う。

スケジュール案 〔全体で45分間〕

① 【10分間】 準備・「Twitterを利用した災害情報共有システム(DITS・DIMS)」の概要、利用方法の説明。テスト投稿。(趣旨の説明、防災・減災全般に関する講義などはあらかじめ実施しておく)

② 【25分間】まち歩き (5~10名程度のグループで実施)・DITSを使い、災害・防災の観点で気になる場所・ものを投稿する。(5ページ参照)(歩くルートをあらかじめ決めておくことが望ましい)

③ 【5分間】 ふり返り・議論・DIMSを使って自分たちの投稿内容をふり返る。(6ページ参照)(議論した結果はレポートなどで提出する、もしくは後日各グループからの報告を行う時間を設ける)

④ 【5分間】 まとめ・活動の総括を行う。

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DITS・DIMSを利用した防災ワークショップ (2)

「災害・防災の観点で気になる場所・もの」は生徒の皆さん自身がそのように感じたものであれば何でも構いません。ただし、最初は見つけるのが難しいかもしれません。例えば、まずは以下のようなものを見つけてみてください。

・災害時に危険になりそうな箇所→ 「崖・急斜面」「川のそば、海のそば」「道幅の狭い道路」・知っておくとよい場所→ 「避難場所・避難所」「津波避難タワー」「防災倉庫」「公衆電話」「AEDの設置

箇所」「消火器の設置箇所」

以下は、これまでに開催した防災ワークショップで生徒の皆さんが投稿した内容の一部です。参考にしてみましょう。

防災倉庫 災害対策用給水装置格納庫 避難所

緊急時飲料提供ベンダー 海抜表示 公衆電話

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DITS・DIMSを利用した防災ワークショップ (3)

ふり返りの際に利用する「ふりかえりシート」の例を以下に示します。(ふり返りの時間に応じて、内容を増減させてください)

先生方へのお願い:ワークショップのまち歩きでは、生徒個人のスマートフォンではなく、学校側が準備したタブレット端末等を利用するようにしてください。また、生徒個人のツイッターアカウントを利用せず、ワークショップ用のツイッターアカウントを学校側であらかじめご準備ください。

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ハザードマップを確認してみよう

災害が発生した際に被害が生じる可能性がある場所や被害の程度を「ハザードマップ」で確認することができます。以下のサイトを利用して、自宅や学校付近を確認してみましょう。(DITS・DIMSを利用した防災ワークショップの実施前にも確認しておくことをお勧めします)

国土交通省ハザードマップポータルサイト 重ねるハザードマップhttps://disaportal.gsi.go.jp/maps/

以下からは、市町村が作成したハザードマップを確認することもできます。

国土交通省ハザードマップポータルサイト わがまちハザードマップhttps://disaportal.gsi.go.jp/hazardmap/

防災アプリをスマートフォンにインストールしよう

以下のスマートフォンアプリは災害対策として有効です。スマートフォンを所有している人は是非インストールしておきましょう。

・Yahoo! 防災速報 https://emg.yahoo.co.jp/

・防災情報「全国避難所ガイド」 http://www.hinanjyo.jp/

・NHK ニュース・防災アプリ https://www3.nhk.or.jp/news/news_bousai_app/

安否確認の手段を家族の間で決めておこう

災害が起きた際の安否確認の手段の一つにスマートフォンの活用があります。スマートフォンを所有している人は、家族の間でスマートフォンを利用した安否確認の手段を決めておきましょう。例えば、LINE

既読機能は安否確認に役立ちます。また、自分の現在地の位置情報を送ることも簡単ですので、外出時に被災した際に自分がどこにいるかを家族に知らせることが可能です。

災害時に役立つTwitterアカウントをフォローしよう

Twitterを利用している人は、災害時に役立つ情報を発信するツイッターのアカウントをフォローしておきましょう。例えば以下のアカウントや自分の住む市町村の公式アカウントをフォローしてみてください。

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・内閣府防災 @CAO_BOUSAI

・首相官邸 (災害・危機管理情報) @Kantei_Saigai

・神奈川県警察本部警備部危機管理対策課 @KPP_bousai

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デマ・不正確な情報に注意しよう

災害が発生した際にはデマや不正確な情報が拡散しやすくなります。例えば、2016年の熊本地震の際には、「地震のせいでうちの近くの動物園からライオンが放たれたんだが」というデマツイートが投稿され(このツイートの投稿者は後に偽計業務妨害の容疑で逮捕されました)、多くの人にリツイートされたため急速に拡散しました。災害時にデマや不正確な情報を投稿することはもちろんのこと、そのような情報をリツイート・シェアすることも避けなければなりません。

1. 受け取った情報を安易に信用しない。(災害時には普段以上に注意する)他にも同じような情報があるか、またその情報を発信している人の前後の投稿を確認するなどして確からしさを十分に確認してください。災害時に間違った情報をもとに行動することは大変危険です。

2. 受け取った情報を安易にリツイート・シェアしない。(災害時には普段以上に注意する)1と同様、情報の確からしさを十分に確認した後にリツイート・シェアをするようにしてください。

普段できることしか災害時はできません

普段からできることしか災害時にできません。例えば、災害が起きた時に急遽災害用アプリをインストールしても使い方がわからず使いこなすことはできません。災害の時だけデマに注意しようと思ってもなかなか難しいと思います。やはり、普段から災害が起きた時のことを想定して様々な準備をしたり、訓練を繰り返したりすることが大切です。

DITS・DIMSを利用した防災ワークショップを一つのきっかけとして防災への意識を高め、災害に備えましょう。また、県や市、自治会・町内会などが実施する防災訓練・防災イベントなどにも是非参加するようにしてください。一緒に「災害に強いかながわ」を目指しましょう。

~~ ノート ~~

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ICT活用型防災教育マニュアル-災害に強いかながわをめざして-

2019年3月発行

東海大学