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ミズナラ(水楢)Quercus crispula Blume (ブナ科コナラ属) ―ミズナラの和名由来- ミズナラは、多量の水分を含み、容易に燃えないナラという意味でつけられた名前である。別名、オ オナラという。それでは、ナラはどんな意味を持つのだろうか。幾つかの説があるが、いずれも葉の特 徴に関してつけられた名前である。 一つの説は、ミズナラの若葉や若枝がしなや かな ところから、「しなやか」の古語のナラナラか らきたという説である。二つ目の説は、他の木の 落葉後も葉が枝に残って風に「ナル」ことから。ナ ル→ナラとなった。三つ目の説は、葉が広く平ら デアルコトカラ。ナラ(平ら) ミズナラと同じ仲間に、ミズナラの葉より、大き いカシワがある。アイヌの伝説にいつも和人にだ まされているアイヌの人が、和人をだましたという 話しがある。アイヌが和人にカシワの葉が落ちる 頃に返すといって金を借りた。和人はきっと葉が 落ちる秋に金を返すのだと思って、秋に返済を 催促したところ、アイヌの人に、カシワを指さして、 まだ、落葉していないと言われ、春まで待たされ たというのである。そういう意味で、ナラの意味 が、この伝説のように、秋になっても葉が残り、北 風に葉をゆらしてかさかさと音を鳴らせているの でナル→ナラという説もうなづける。そうするとナ ラの語源はカシワ(ナラ)のナラからきたのではな いかとも推測できる。なお、ミズナラの葉は、カシ ワ(ナラ)の葉ほど冬には残っていない。 ミズナラ コナラ カシワ

ミズナラ(水楢)Quercus crispula Blume (ブナ科コナラ属 ...ミズナラ(水楢)Quercus crispula Blume (ブナ科コナラ属) ―ミズナラの和名由来-

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ミズナラ(水楢)Quercus crispula Blume (ブナ科コナラ属)

―ミズナラの和名由来-

ミズナラは、多量の水分を含み、容易に燃えないナラという意味でつけられた名前である。別名、オ

オナラという。それでは、ナラはどんな意味を持つのだろうか。幾つかの説があるが、いずれも葉の特

徴に関してつけられた名前である。

一つの説は、ミズナラの若葉や若枝がしなや

かなところから、「しなやか」の古語のナラナラか

らきたという説である。二つ目の説は、他の木の

落葉後も葉が枝に残って風に「ナル」ことから。ナ

ル→ナラとなった。三つ目の説は、葉が広く平ら

デアルコトカラ。ナラ(平ら)

ミズナラと同じ仲間に、ミズナラの葉より、大き

いカシワがある。アイヌの伝説にいつも和人にだ

まされているアイヌの人が、和人をだましたという

話しがある。アイヌが和人にカシワの葉が落ちる

頃に返すといって金を借りた。和人はきっと葉が

落ちる秋に金を返すのだと思って、秋に返済を

催促したところ、アイヌの人に、カシワを指さして、

まだ、落葉していないと言われ、春まで待たされ

たというのである。そういう意味で、ナラの意味

が、この伝説のように、秋になっても葉が残り、北

風に葉をゆらしてかさかさと音を鳴らせているの

でナル→ナラという説もうなづける。そうするとナ

ラの語源はカシワ(ナラ)のナラからきたのではな

いかとも推測できる。なお、ミズナラの葉は、カシ

ワ(ナラ)の葉ほど冬には残っていない。

ミズナラ

コナラ

カシワ

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-ミズナラの子孫を残す戦略―

地面に落ちた実は、そのままでは大きな親の体が太陽の光をさえぎり、芽を出しても成長でき

ない。そこで、親のミズナラは、栄養のたっぷり、つまっている大きい実(ドングリ)を落とし、ミヤマカケ

ス、エゾリス、エゾアカネズミなどに他の地に運んでもらい、そこで子孫を増やす。例えば、エゾリス

は他の地にドングリを運び、一度に食べられな

いと地面に穴を掘って中にドングリを埋める。

その食べ忘れたドングリが芽を出し、成長する

というわけである。

ミズナラ(ドングリ)が他の木と違うのは、秋、

土の中に根を伸ばし、冬を過ごすことである。

春先、他の植物が芽を出す前に一番先に芽

を出し、大きな葉っぱを繁らす。そうすると、自

分のまわりには誰も入ってくることが出来ない。

ミズナラは、エゾリスなどに日当たりの良い

所にドングリを運んでもらい、誰よりも早く芽を

出すので森の一番場所の良い所を占領して、

一番丈夫で大きな木になるので、森の王様と

言われる。

―利用価値―

材は、重く、堅く、ち密で木理が美しく、家具、

建築材など用途は広い。戦前はインチ寸法立

てで製材された材が最高級のオーク材として

欧米に輸出され、家具材や棺おけ材として利

用されていた。

酒との相性がよく、ウイスキーやワインの樽材

としても利用される。

木材にあらわれる木目には、年輪によるも

ののほかに年輪の中心から放射状に入る組

織によるもの(斑)があり、ミズナラの柾目面に

現われる斑が虎の毛皮に似ているので「虎斑

(とらふ)=杢」と呼ばれ、美しいことで有名で

ある(旭川工芸センターホームページより)。

エゾリス

ミヤマカケス

ミズナラ材(虎斑)

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