3
icles Helicobacter pyro万 の研究 東京医科大学 第 4内 まず、 この ような執筆 の機会 を くだ さい ま した 日本癌病態治療研究会事務局ならびに関連の に深 く感謝 いた します。 * 〃θ J′ εθわαθ′ιγ ′θ″′(二 )の 研 究 を始 め た の は、1994年 に八王子医療 セ ンターに勤務 してす ぐの頃、当時の消化器内科部長の西里先生から、 ガの研 究 をや って み ない か と持 ち か け られ たのがきっかけだった。東京医科大学は東京薬科 大学 と姉妹校であるため、二 ′θ河の研究は、私 勤めている東京医科大学八王子医療センター 東京薬科大学微生物学教室 (現 病原微生物学 教室)、 さらに八王子薬剤 セ ンタ の三者の共同研 究 とい う形 で始 まっ た。 この共 同研 究 の 臨床 調剤が一 体化 し、良 条件を与えていただき ′θガの 研究を進めてい ことがで きた。研 究 テーマは、病原性 をみるためのI″ ′θグの BiOtype の研究、除菌療法において最 も注 目されている抗 菌剤の耐性の研究である。簡単に 2つ について述 る。 1。 BiOtype(生 物型) 細菌の分類法には、遺伝子型 (genOtype)、 清型 (serOtype)、 生物型 (biotype)な どがあ り、 欧米では CagA(サ イ トトキシン 関連蛋白)が 原性 に関連するとされて多 くの研究者 により検討 が進められていた。われわれは、腸炎ビブリオな どにおいては細菌の病原性を血清型で検討 してお l Blotypeと 消化器疾患 DU GU+DU Gastriti I+I +Ⅱ Ⅲ+Ⅲ +Ⅲ I+Ⅱ I+ND GU:胃 潰瘍、DU:十 二指腸潰瘍、GU+DU:胃 十二指腸漬瘍、 Gastntも :慢 性 胃炎 、ND:分 類不能 2 Biotypeと 除菌率 同一型 250%(1/4) 448%(13/29) 54.3%(19/35) I+I型 +ⅡⅢ+Ⅲ型 混合型 Ⅱ+Ⅲ型 846%(11/13) 全体除菌率 543%(44/81) り、ニ ″の病原性 をBiotypeで 検討 し、疾患特 異性および除菌率 及 ぼす影響 を検 討 した。 まず 二 ′θ″の Biotypeは API ZYMキ ッ トを いて Kungの 分類 に従 I、Ⅱ、 Ⅲ型 に分類 した。二 ガは前庭 部 と体 部 を別 々に分離培養 したところ、疾患 とBiotypeの 関連 は表 1の よう に認め られなかった。除菌療法 との検討では、 Lnsoprazole 30mg+Amo対 cillinlAMPC)15 2週 間投与 による除菌療法では、前庭部 と体部 Biotypeが 異なるⅡ Ⅲ型において高 除菌率 が得 られた (表2)。 2.耐 性菌 I″ ′θ万は感染症 で あ り、通常 われ われ は感染 И ttυ ι s Tゐ .8助.120" δ 7

icles Helicobacter - UMIN

  • Upload
    others

  • View
    9

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: icles Helicobacter - UMIN

iclesHelicobacterpyro万の研究東京医科大学 第 4内科

まず、このような執筆の機会をくださいました

日本癌病態治療研究会事務局ならびに関連の方々

に深 く感謝いたします。

*

〃θJ′εθわαθ′ιγ″′θ″′(二″ Jθガ)の研究を始めた

のは、1994年に八王子医療センターに勤務 してす

ぐの頃、当時の消化器内科部長の西里先生か ら、

二″ Jθガの研究をやってみないかと持ちかけられ

たのがきっかけだった。東京医科大学は東京薬科

大学 と姉妹校であるため、二″′θ河の研究は、私

の勤めている東京医科大学八王子医療センター、

東京薬科大学微生物学教室 (現在の病原微生物学

教室)、 さらに八王子薬剤センターの三者の共同研

究 という形で始まった。この共同研究の臨床・基

礎 。調剤が一体化 し、良い条件を与えていただき

二″′θガの研究を進めてい くことがで きた。研究

テーマは、病原性をみるためのI″′θグの BiOtype

の研究、除菌療法において最 も注 目されている抗

菌剤の耐性の研究である。簡単に 2つ について述

べ る。

1。 BiOtype(生物型)

細菌の分類法には、遺伝子型 (genOtype)、 血

清型 (serOtype)、 生物型 (biotype)な どがあ り、

欧米ではCagA(サ イ トトキシン関連蛋白)が病

原性に関連するとされて多 くの研究者により検討

が進められていた。われわれは、腸炎ビブリオな

どにおいては細菌の病原性を血清型で検討 してお

表 l Blotypeと消化器疾患

DU GU+DU Gastritis

I+I

Ⅱ+Ⅱ

Ⅲ+Ⅲ

Ⅱ+Ⅲ

I+Ⅱ

I+ND

GU:胃 潰瘍、DU:十 二指腸潰瘍、GU+DU:胃 ・十二指腸漬瘍、Gastntも :慢性胃炎、ND:分類不能

表 2 Biotypeと除菌率

同一型 250%(1/4)448%(13/29)

54.3%(19/35)

I+I型Ⅱ+Ⅱ 型

Ⅲ+Ⅲ 型

混合型 Ⅱ+Ⅲ 型 846%(11/13)

全体除菌率 543%(44/81)

り、ニル ″の病原性をBiotypeで 検討 し、疾患特

異性および除菌率へ及ぼす影響を検討 した。

まず二″′θ″の Biotypeは、API ZYMキ ットを

用いてKungの分類に従い、 I、 Ⅱ、Ⅲ型に分類

した。二″ Jθガは前庭部と体部を別々に分離培養

したところ、疾患 とBiotypeの 関連は表 1の よう

に認め られなかった。除菌療法 との検討では、

Lnsoprazole 30mg+Amo対 cillinlAMPC)1500mg

の 2週間投与 による除菌療法では、前庭部 と体部

で Biotypeが異 なる Ⅱ十Ⅲ型 において高い除菌率

が得 られた (表 2)。

2.耐性菌

I″′θ万は感染症であ り、通常われわれは感染

″″Иttυιs Tゐ′.8助 .120" δ7

Page 2: icles Helicobacter - UMIN

症の治療を行う場合、その細菌に対する各種抗菌

剤の薬剤感受性試験を行い、抗菌剤を選択 し投与

している。三″ Jθ″の培養、薬剤感受性試験は煩

雑であるため、一般に感受性試験は行われていな

いのが実情である。われわれは、患者から培養し

た菌株 をできる限 り、薬剤感受性試験を行った。

薬剤感受性は、最小発育阻止濃度 (MIC)を 日本

化学療法学会方に準 じ寒天平板希釈法にて測定し

ている。

初回 (除菌前)の各種抗菌剤の耐性菌の比率 (表

3)は、AMPC(≧ 3.13 μ g/ml):0.3%13/802)、

Clarithromycin(Cttν I)(≧ 3.13 μ g/ml):6.3%

(49/787)、 Metronizazole(ⅣINZ)(≧ 12.5μ

g/ml):3.7% (28/773)、 Cefaclor(CCL)(≧

3.13 μ g/nll) : 2.2つる (17/773)、 sparfloxacin

(SPFX)(≧ 3.13 μ g/ml):8.8%(68/771)で あ

り、欧米に比べるとMNZの耐性菌の比率が低 く、

CノWI、 SPIⅨ の耐性菌の比率が高かった。これら

は二″′θ″以外の呼吸器疾患など感染症において、

本邦ではマクロライ ド系、ニューキノロン系抗菌

剤が多 く使用されていることに起因する可能性が

推測されている。

また、さらに多剤耐性菌が 1.4%(9/610)の 人

に認められた。 3剤耐性が 4例 (CAR/1+CCL+

表3 各種抗菌剤に対するMIC値別のHρy10″菌株数

SPFX: 2夕 J、 CAヽ〔十R/1NZ+SPFX: 1夕 J、

AMPC+CAM tt MNZ: 1例 )、 2斉J耐性が 5例

(CAM+SPDE 4例 、CAM+CCL:1例 )であ

る。 これら9人の患者に対する間診によると、以

前 より慢性気管支炎、慢性副鼻腔炎にてこれまで

に多種類 。多数の抗菌剤を長期にわた り服用して

いる患者が多かった。

除菌治療と薬剤耐性

前項にて各種薬剤に対する薬剤耐・性の頻度を検

討 したが、本項では、薬剤耐性が除菌療法に及ぼ

す影響、さらに除菌療法が起こす薬剤耐性につい

て述べる。

現在の除菌 レジメは、proton pump inhibitor

(PPI)十 AMPC+CJ呻頭の 1週 間投与による 3剤

療法が基本 レジメであるが、この 3剤療法にて除

菌治療 を行った 257例 において、除菌療法前の

AMPC耐性は 1株、CAM耐性は31株に認められ

た。薬剤耐性が除菌治療に及ぼす影響を検討する

目的にて、除菌前にCAMが前庭部 。体部 ともに

感受性であったCAM感受性症例 と前庭部・体部

いずれか、あるいは両者がCAM耐性であった

C皿 耐性症例に分けて、それぞれの除菌率を検討

した。除菌前に前庭部・体部いずれも薬剤感受性

を測定できたものが190例、うち感受性症例 172

MIC SPFX

表 4 除菌前の CAM感 受性別の 3剤療法

(PPI十 AMPC+CAM)の除菌率の検討

除菌率

CAM感受性菌のみの患者 901° /。 (155/172)

CAM耐性菌を有する患者 111%(2/18)

CAM:ク ラリスロマイシン

表 5 3斉」療法除菌療法前後の月.ρ y′0″菌の

CAM感受性の変化

除菌前 除菌後

CAM感受性菌 932%(411/452)338° /。 (24/71)

CAM耐性菌 68%(31/452)662%(47/71)

0.0125 523(652%)139(0.025 126(157%) 186(0.05 79(9.9%)287(01 46(57%) 90(0.2 13(16%) 25039 7(09%) 7078 4(05%) 3156 1(01%) 1313 0(00/。 ) 5625 1(0.1°/0) 612.5 2 02%) 4

0°/。) 210°/。) 110%) 2

177%) 0236%) 0365%) 0114%) 432%) 1209%) 1204%) 7001%)2490.6%)30608%) 9205°/.) 1327°/●) 314%) 603%) 6

0%)

0%)

0%)

05°/。 )

16%)16%)

91%)

(322%)

(396%)

(119%)

1.7%)

04%)08%)

08%)

261%) 12190°/。) 20163%) 29109%)183102°/。)29172%)11641%) 313.9%) 2108%) 230.6%) 310.5%) 1203°/。) 10%) 10%) 0

(16%)(26%)(38%)(23.7%)

(37.7%)

(150%)

40%)27%)

30%)4.0%)

16%)

01%)

0.1%)

202(

147(

126(

34(

79(

25

50

100

T7ワ Iタフυ● T′bJ.8 助 .1 2002

卜口ニダゾール、

(0°/。 )

CAM:ク ラリスロマイシン

Page 3: icles Helicobacter - UMIN

表 6 3剤療法不成功後CAM耐性症例におけ

る除菌前後の Hρy′0″の感受性の変化

除菌前 除菌後

感受性菌 感受性菌と耐性菌の混在(耐性菌の出現)

点突然変異(他疾患における

抗菌剤の使用)

ている。

さらに 3剤療法 (PAC)除菌不成功後 CAM耐性であった症例で、前庭部、体部のMICが除菌前

後においてすべて測定し得た 17例において、除菌

前後の薬剤感受性の変化を詳細に検討 した。表 6

のように 3つ のパターンに分類できた。すなわち

I型 として除菌前は前庭部、体部ともに感受性菌

(SS)か ら除菌後両部位とも耐性菌 (R―R)と なる

もの、 Ⅱ型 として除菌前は前庭部、体部のいずれ

かが感受性菌で他方が耐性菌 鱚 R)であったもの

が除菌後両部位とも耐性菌 (R―R)と なるもの、Ⅲ

型として除菌前は前庭部、体部いずれも耐性菌 (R―

R)が除菌後もそのまま両部位 とも耐性菌 (R― R)

として残存するものである。

以上より、図 1に示す模式図のように除菌後の

耐性菌増加の機構には、23SrRNAの point muねtion

とともに互″わ″の菌の selectionに よるもの両者

が起こっている可能性があると考えている。

*

最後に、この研究を通 じて他の大学 ,研究機関

の先生方と知 り合いになれましたことが、本当に

良かったと思ってお ります。東京薬科大学の笹津

教授をはじめとする共同研究者の方々にも深 く感

謝いたしてお ります。

今後 も地道な臨床研究を続けていきたいと考え

てお ります。

S― S

S― R

R一 R

R― R

R― R

R一 R

6症例

4症例

7症例

S:感受性菌、R:耐性菌

例、耐性菌症例 18例であった。それぞれの除菌率

は感受性 90.1%(155/172)、 耐性 11.1%(2/18)

と両者の間に著明な差が見られた (表 4).

すなわち、除菌前にCAM耐性菌であると 3剤

療法ではわずか 10人に 1人 しか除菌できないこと

になり、除菌療法前の薬剤感受性試験は重要であ

ると思われた。AMPC耐性患者は 1例のみであり、

Ah/1PCに対する感受性別の除菌率の検討は行わな

かった。ただしAMPC耐性菌患者 (CAMと MNZ耐性の多剤耐性患者であった)は、ちなみに除菌

不成功であった。

次に、除菌療法が引 き起こす薬剤耐性について

同様に 3剤療法を行った257例 について、除菌療

法前後におけるAMPCお よびCAMの MIC値の変

化について検討 した。AVIPCでは、除菌前後とも

耐性菌は 1株のみで変化は認められなかった。

一方 CAMで は、除菌前は感受性菌 と耐性菌の

比率は93.2%:6.8%で あったが、除菌後は、そ

の比率が33.8%:66.2%と 逆転 していた (表 5)。

つまり、除菌不成功後は2/3の菌株が CANI耐性菌

となることがわかった。このCAM耐′陛機構に関

しては、Debets― Ossenkoppら の報告 によ り

23SrRNAの point mutationが 原因であることが報

告されている。われわれも同様に23SrRNA領域の

850bpの シークエンスにて、耐性菌では、2143あ

るいは2144番 のA→ Gへのpoint mutationを 認め

И′Nttυ′s レbι.8 No.1 2りθ2