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1

第 9 章 スーパーへテロダインラジオの製作

古橋 武

9.1 組み立て

9.2 調整

9.3 充電池一個(電源電圧 1.25 [V])の試み

本稿の Web ページ

http://www.mybook-pub-site.sakura.ne.jp/Radio_note/index.html

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9.1 組み立て

スーパーへテロダインラジオとは,受信した放送信号を別の周波数(中波帯の AM ラジ

オでは 455kHz)の信号に変換して増幅し,その後に復調を行う回路方式のラジオをいう.

例えば,名古屋の NHK 第一は 729kHz であるが,これを 455kHz の周波数に変換

する.放送信号が NHK 第二 (909kHz),CBC ラジオ (1053kHz),東海ラジオ (1332kHz)

のいずれであっても,455kHz の信号に変換する.図 9.1.0 はスーパーヘテロダイ

ンラジオの構成を示す.NHK 第一を受信した場合,同調回路は 729kHz の放送信

号を捉える.周波数変換回路はこの放送信号を 455kHz(中間周波数と呼ばれる.)

に変換する.図は中間周波増幅回路 2 段の構成例である.中間周波増幅回路を挟

んで 3 段の中間周波トランスがある.このトランスは共振回路であり,いずれの

共振周波数も 455kHz である.

スーパーヘテロダインは Supersonic heterodyne の略であり, supersonic (超音

波の,中波帯の AM ラジオの場合は 455kHz を指す),hetero(もう一つ別の),

dyne(パワー)を意味する.したがって,スーパーヘテロダインラジオは,放送

信号を別の信号に変換するラジオであることを意味している.選択度(目的の放

送局の信号のみを抽出する能力)のすばらしく高いラジオである.ストレートラ

ジオやレフレックスラジオでは夜間に近接局(周波数が近い局)同士が混信を引

き起こして聴き苦しいことがあるが,スーパーへテロダインラジオはこの混信を

よく低減できる.ストレートラジオの感覚でこのラジオの選局ダイアルを廻すと,

同調点をたちまち通り過ぎてしまい,各局を全く捉えられないことになりかねな

い.狭い角度の範囲内に同調点があるのでゆっくりとダイアルを回す必要がある.

周波数を変換する効果は以下の二つが挙げられる.

同調回路

周波数変換回路

復調回路

低周波増幅回路

中間周波増幅回路

中間周波トランス

中間周波トランス

中間周波増幅回路

中間周波トランス

455kHz729kHz

可聴周波数455kHz

図9.1.0 スーパーヘテロダインラジオの構成

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発振を引き起こさずに回路全体の電圧増幅度を上げることができる.放送周波数のまま

増幅を重ねると,後段の信号が前段の増幅回路へと廻り込み,発振を引き起こしてしまう.

高周波信号は寄生容量などを介して容易に前段へと伝わってしまうからである.受信周波

数とは異なる中間周波数に変換して増幅する場合は,前段の高周波回路に後段の出力信号

が廻り込んでも,周波数が違うので発振条件が満たされることはない.また,455 [kHz]と低

い周波数に変換することで,寄生容量による悪影響を減らすことができる.

中間周波トランスの共振周波数を固定できる.全ての放送波を一定の中間周波数へと変

換することで,複数の中間周波トランスの共振周波数を逐一調整する必要がない.このため,

中間周波トランスを複数段連ねることが容易になり,図 11.1.7 の様にラジオの選択度を高

めることができる.

図 9.1.1 はスーパーへテロダインラジオの基本形の回路図である.このラジオは同調回

路,混合回路,中間周波増幅回路,復調回路,AGC 回路からなる.混合回路は,例えば

放送信号が 729kHz の場合,1184kHz の信号を局部発振回路(OSC)により生成して,トラン

ジスタ Tr1 により放送信号と局発信号を混合して 455kHz の中間周波信号を作り出してい

る.電流増幅回路は普通のイヤフォン(スマートフォン,iPOD や Walkman などの携帯音

響機器に使われているイヤフォン)を利用できるようにするために本書で独自に付加して

ある.この電流増幅回路は,クリスタルイヤフォンを使用する回路の場合には必要ない.

図 9.1.2 は組み立て図である.ただし,電池は外してある.図 9.1.3 は組み立て図の拡大

写真である.配線の詳細は図 9.1.4,図 9.1.11,図 9.1.14 の 立体配線図を参照されたい.ブ

レッドボード上に製作したスーパーへテロダインラジオである. このスーパーへテロダ

インラジオの特徴は OSC コイル(局部発振用コイル OSC,図 9.1.2,図 9.1.3 では赤いネジ

を持つ部品)と中間周波トランス(IFT1~3,黄,白,黒のネジを持つ部品)にある.

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図9.1.2 スーパーヘテロダインラジオの組み立て図

電流増幅回路同調回路 中間周波増幅回路AGC回路

復調回路

図9.1.1 スーパーヘテロダインラジオの回路図

10µ

470µ

1k

100kR12

R13

C11

C10 Tr4

3~12V

E

Vdd

GND

イヤフォン

+

混合回路

2SC1815

10kR11

600µ

0.01µ 2SC1815

3300p

R2

R1

R3

C2C1

C3

Tr1

100k

2k

2SC1815

0.22µ

R4

R5 C5

Tr2

50k

10k

2SC1815

0.22µ

R6

R7

C6

Tr3

10µ

C4

2kR8

0.22µC7

0.01µ

2200p

1N60

C8

C9

D1

OSC

IFT1 IFT3IFT2

C1’L1

100k

200k

10k

50k 2.2kR9 R10

+

+

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図9.1.3 スーパーヘテロダインラジオの組み立て図(ボード部分の拡大写真)

R2 R3

C2

C1

C3

R4

R9 C5

Tr2 R6

R5 C6

Tr3

C4

R12

R13

C11

C10

Tr4

R7

C7

C8

D1 R11

OSC IFT1 IFT3IFT2

L1

R8 R10C9

選局ダイアル 音量調節用ボリュームバーアンテナ

R1

Tr1

OSC(赤)

図9.1.4 同調回路,混合回路の立体配線図

R2

R1

R3

C2

Tr1

C3

L1

C1

IFT1(黄)

C1’

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図 9.1.4,図 9.1.5 は同調回路+

混合回路の立体配線図と回路図

である.同調回路の組み立ては

2.1 節を参照されたい.図 9.1.6

に OSC コイルの外観と記号を示

す.赤いネジが目印である.

OSC コイルをブレッドボードに

挿入するためには足を加工しな

ければならない.その様子を図

9.1.7 に示す.まず上の写真のよ

うにシールドケースの足を切除

する.写真の左側が切除前であ

り,右側が切除後である.次に

下の写真のように 3 つ並んでい

る電極の真ん中の電極を切断

し,その後に少し左側にハンダづけする.これは 3 つの電

極の間隔がブレッドボードの間隔と合っていないための措

置である.真ん中の足を少し曲げて無理矢理差し込むこと

もできるが,力を入れすぎると電極を支えているプラスチ

ックの土台がもろくも壊れてしまうことがある.

図 9.1.8 はポリバリコンの外観と記号を示す.OSC コイ

ルと並列に接続するコンデンサ C1’は最大 70 [pF]ほどの静電容量を持つ.図 9.1.9 はポリバ

リコンの各電極にリード線をハンダづけした様子を示す.これによりポリバリコンをブレ

ッドボードに挿入できる.図 9.1.10 は OSC コイルとポリバリコンのコンデンサ C1’を接続

した立体配線図である.コンデンサ C1’は同調回路のコンデンサ C1 と同じ軸に取り付けら

0.01µ

100k

200k

10k

2SC1815

3300pR2

R1

R3

C3

Tr1

図9.1.5 混合回路

OSC

IFT1

C1’600µ

C2C1

L1

(b) OSCコイルの記号(a) OSCコイル外観

図9.1.6 OSCコイル

図9.1.7 OSCコイルの改造

ケースの足の切除

ケースの足の切除

コイルの中間タップ電極の移設

シールドケースの足の切除

(後)(前)

(後)(前)

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れていて,同調回路の共振周波数 fL1_C1(コイル L1とコンデンサ C1 による共振)に対して

局部発振回路の共振周波数 fOSC_C1’(OSC コイルとコンデンサ C1’による共振)の差が常に

455 [kHz]となるように作られている.fL1_C1 が 600 [kHz]~1400 [kHz]の間を変化するとき,

fOSC_C1’は 1055 [kHz]~1855 [kHz]の間を変化しなければならない.fL1_C1 の変化比率は 1:

2.33 であるのに対して fOSC_C1’のそれは 1:1.66 である.変化比率が異なりながらも,共振

周波数差を 455 [kHz]一定に保つためにコンデンサの電極形状に工夫がなされている.

図 9.1.11,図 9.1.12 は中間周波増幅回路の立体配線図と回路図である.中間周波トラン

ス(IFT1, IFT2, IFT3)の各電極の接続の詳細を示してある.図 9.1.13 は中間周波トランス IFT

の外観写真と記号を示す.中間周波増幅回路は 455 [kHz]±数[kHz]の信号成分専用の増幅

回路である.中間周波トランスはそれぞれ 455 [kHz]に共振周波数を持ち,3 個の共振回路

と 2 段の増幅回路により,455 [kHz]の周辺の信号成分のみを大きく増幅する.感度,選択

度のよいラジオを実現するための重要な回路である.

図 9.1.14,図 9.1.15 は復調回路と AGC (Automatic Gain Control)回路の立体配線図と回

路図を示す.遠くの放送局,近隣の放送局,大出力の放送局,小出力の放送局などを選局

する際に,どの局もボリューム抵抗(図 9.1.1 では R11)を調節しなくてもほぼ同じ音量で

聴けるようにするための回路である.中間周波増幅回路により増幅度に余裕ができたこと

を利用して,負帰還回路を構成している.

150pmax

70pmax

図9.1.8 ポリバリコン

図9.1.10 ポリバリコンとOSCコイルの接続

C1’

C1

C1’

図9.1.9 リード線の取り付け

C3へ

OSC(赤)

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図9.1.12 中間周波増幅回路

100k

2k

2SC1815

0.22µ

R4

R5 C5

Tr2

50k

10k

2SC1815

0.22µ

R6

R7

C6

Tr3

10µ

C4

2kR8

0.22µC7

1N60D1

IFT1 IFT3IFT2

図9.1.11 中間周波増幅回路の立体配線図

R4

R5

Tr2

C5

C4

R7

R6

R8

Tr3

C7

IFT2(白)

C6D1

IFT3(黒)

IFT1(黄)

OSC(赤)

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図9.1.13 IFT

IFT2(白) IFT3(黒)IFT1(黄)

(b) IFTの記号(a) IFTの外観

図9.1.14 AGC回路の立体配線図

R9

Tr2

C4

R11

R4

R10C8

C9

D1

IFT3(黒)

IFT1(黄)

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なお,スーパーへテロダインラジオ特有の部品である OSC コイル(赤),中間周波トラン

ス IFT1(黄),IFT2(白),IFT3(黒)の(平成 21 年 10 月時点の)筆者の購入先を表 9.1.1

に示す.他の部品の購入先については表 1.1.1 を参照されたい.

図9.1.15 復調回路とAGC回路

100k

2SC1815

R4

Tr2

10µ

C4

0.01µ

50k 2.2k

220p

1N60

R9 R10

C8

C9

D1

R11

IFT1 IFT3

表9.1.1 部品の定格と購入先

部品 型式・定格 単価 数量 購入先

OSC 発振コイル455kHz, 赤色,10mm角

130 1 電子パーツ通販KURAhttp://www.kura-denshi.com/

IFT 中間周波トランス455kHz, 黄色,初段, 10mm角

130 1 〃

IFT 中間周波トランス455kHz, 白色,中断, 10mm角

130 1 〃

IFT 中間周波トランス455kHz, 黒色,終段, 10mm角

130 1 〃

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9.2 調整

スーパーへテロダインラジオは調整の難しいラジオと言われている.難しいのは OSC コ

イル,中間周波トランスとポリバリコンの背面のトリマコンデンサの調整である.これらは

工場出荷時に調整されているので触らないと決めてかかれば,各抵抗値を図 9.2.1 に示され

ている値に調整するだけでよい.ただし,音量調節用抵抗 R11 を真ん中辺りとする.選局用

ダイアルをゆっくりと回せば音が聞こえてくるはずである.音が聞こえれば,音量を絞り,

抵抗 R1~R8 を一つずつ音質が良くなる方向へと少しずつ回すことを繰り返せばよい.どう

しても放送を捉えることができなければ,各部の直流電圧が図中の値に近い値となってい

るかテスタで調べることを勧める.ただし,この直流電圧は電源電圧 Vdd = 5.5 [V]で放送波

を受信していない状態での値である.いずれかの値がここに示した値から大きくずれてい

る場合には,配線ミス,部品のとり違いなどがあるので,その周辺を集中的に調べるとよい.

電源電圧 3~12 [V]の範囲で回路が動作することを確認している.

中間周波トランス IFT1, IFT2, IFT3 を調節する覚悟ができたら,IFT1(黄), IFT2(白), IFT3

(黒)の順に動かしてみてください.低い周波数の放送局(著者の地域では NHK 名古屋(729

[kHz]))の放送を聴きながら,まず黄色のつまみを動かして音量が最も大きくなるところを

探す.次に白色のつまみに対して同様のことを行う.最後に黒色のつまみに対して調節する.

OSC コイルの赤いつまみは触らないことを勧める.

OSC コイルを調整するには AM 変調波を出力できるテストオシレータが必要である.周

波数カウンタもしくは周波数カウンタ機能付きオシロスコープがあるともっと良い.発振

器,測定器を使わないで OSC コイルやポリバリコン背面のトリマコンデンサを動かすと収

拾のつかない方向へと調整がずれて行ってしまうことがある.著者自身もいつの間にか中

間周波数 460 [kHz]で調整終了していたことが一度ならずあった.

OSC コイル(赤)とポリバリコンのトリマを調整する目的は,ラジオを収めるケースが

ある場合には,ケースの目印とダイアルつまみの値を合わせること,そして,AM 放送波帯

の全範囲で中間周波数を 455 [kHz]一定に保つことである.NHK 名古屋(729 [kHz]),東海ラ

ジオ(1332 [kHz])のいずれの放送局を受信しても,受信周波数と局部発信周波数との差が

455 [kHz]となるように各つまみを調節する.

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電流増幅回路同調回路 中間周波増幅回路AGC回路

復調回路

図9.2.1 スーパーヘテロダインラジオの調整

10µ

470µ

1k

50kR12

R13

C11

C10 Tr4

3~12V

E

Vdd

GND

イヤフォン

+

混合回路

2SC1815

10kR11

600µ

0.01µ 2SC1815

3300p

R2

R1

R3

C2C1

C3

Tr1

55k

1.2k

2SC1815

0.22µ

R4

R5 C5

Tr2

22k

5.5k

2SC1815

0.22µ

R6

R7

C6

Tr3

10µ

C4

1kR8

0.22µC7

0.01µ

2200p

1N60

C8

C9

D1

OSC

IFT1 IFT3IFT2

C1’L1

1.65[V]

1.0[V] 1.1[V]0.47[V]

47k

93k

5.7k

1.2[V]

5.5[V]

1.8 [V]

20k 2.2kR9 R10

+

+

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9.3 充電池一個(電源電圧 1.25 [V])の試み

充電池一個(電源電圧 E = 1.25 [V])でこのラジオを鳴らせるか?

試してみた.結論としては E = 5.5 [V]のときとほぼ同じ音質でラジオ放送を聴くことがで

きた.図 9.3.1 は図 9.1.1~9.1.3 の回路において電源電圧 E = 1.25 [V]として,抵抗 R1,R4,

R6,R8 を調整した結果である.図中の各部の電圧は放送波を受信していない状態での値で

ある.図 9.2.1 の値と異なる箇所を朱書きしてある.ただし,入念に調整した値ではない.

電圧範囲に余裕が無く,AGC を効果的に働かせる設定は難しい.図 9.2.1 の設定からいきな

り 1.25 [V]へ下げると調整が難しいので,6 [V] → 3 [V] → 1.5 [V] → 1.25 [V]と徐々に下

げながら調整していくと確実に動作点を見つけることができる.

2010 年 1 月 2018 年 12 月(9.1 節加筆)

著者: 古橋 武

名古屋大学工学研究科情報・通信工学専攻

furuhashi at nuee.nagoya-u.ac.jp

本稿の内容は,著作権法上で認められている例外を除き,著者の許可なく複写することは

できません.

電流増幅回路同調回路 中間周波増幅回路AGC回路

復調回路

図9.3.1 スーパーヘテロダインラジオの調整(電源電圧1.25V)

10µ

470µ

1k

50kR12

R13

C11

C10 Tr4

1.25VE

Vdd

GND

イヤフォン

+

混合回路

2SC1815

10kR11

600µ

0.01µ 2SC1815

3300p

R2

R1

R3

C2C1

C3

Tr1

5.2k

1.2k

2SC1815

0.22µ

R4

R5 C5

Tr2

4.6k

5.5k

2SC1815

0.22µ

R6

R7

C6

Tr3

10µ

C4

160R8

0.22µC7

0.01µ

2200p

1N60

C8

C9

D1

OSC

IFT1 IFT3IFT2

C1’L1

1[V]

0.41[V] 0.7[V]0.067[V]

47k

9.3k

5.7k

0.49[V]

1.25[V]

1 [V]

20k 2.2kR9 R10

+

+