40
ISSN0916-3328 東 京 大 学 ア イ ソ トー プ総 合 セ ンター VO L .26 NO. 1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を 長 い 間 お世 話 に.な った ア イ ソ トー プ セ ソ タ- と も、 い よい よお別 れ す る こ とに な った 。 停 年 を迎 え , 過 去 を ふ り返 り, 今 まで 歩 ん で きた 道 を 思 い お こ した 。 これ か ら歩 む べ き 道 を き め る の に 良 い 機 会 で あ る。 しか しい く ら格 好 の 良 い こ と を 云 って み て も, 貧 しい 能 力 ゆ え に , 今 まで した い と思 い つ つ も実 現 で き な か っ た こ と が で き る よ うに な る保 証 は ど こに.もない 。 ト リチ ウ ム の 測 定 を 含 め て , 自分 の 研 究 は 一 進 一 退 を く り返 しつ つ , 進 む 方 が 退 く方 よ りも多少とも大きければ,研究は遅々とした歩みではあっても前進していることになるい わ ば 波 動 しな が ら も少 しず つ 上 昇 して い る と も云 え る考 え て み れ ば , 人 間 は 常 に 波 動 , あ る い は 前 進 , 後 退 を く り返 して 生 きて い る例をあ げ れ ば , 呼 吸 で も空 気 を 吸 って は は き, 吸 って は は き して い る し, 血 液 だ って 心 臓 は 収 縮 して 大 動 脈 へ血 書夜を送 り出 し,拡 張 して は血 液 を肺 静 脈 か ら入 れ て い る. 食 事 だ って 食 べ て は 消 化 し, 空 腹 に な った 又 食 べ る の く り返 しだ し, 寿 命 が つ き る前 に 子 を 残 し, 個 人 の 寿 命 は 有 限 だ が , ヒ トと い う種 に と って は 寿 命 は 無 限 だ と信 じ られ て い るO ところで,自分の研究の途上で,小さな失敗は数えきれないが,ある時,越すに越され ぬ 大 き な 壁 に ぶ ち 当 た った 。 長 い 間 正 しい と信 じ られ , 自分 も信 じて い た 定 説 に 反 す る結 果 が得 られ , 自分-の研 究 方法 な ど考 え つ くす べ て の事 項 で点 検 してみ た が, 原 因 は分・か ら ず , ど う解 釈 して 良 い も の や ら見 当 も つ か ず , す で に 何 年 も行 って きて い る こ の テ ー マ で の 研 究 を あ き らめ な け れ ば な らな い か と い う弱 気 が 時 に は 頭 を も た げ た り した 。 しか し他 にすること,できることもなかった。 数 年 にわ た る期 間,一寸 も前進 しなか った。 自分 の能 力 の乏 しきをならずき,親 を うらんで み て も何 の 役 に も立 た な い と悟 り, 何 の 成 果 も残 さず に 人 生 を 終 って も, 少 な くと もや るべ き こ とは や った , す なわ ち人 事 は つ く して 天 命 を まつ とい う思 い は残 るに ち が い な い と月土を くくることができた。そ して,それまでの研究に執念深 く,あるいは未練がましくしがみつ い て い た ら, 実 は 定 説 が 未 だ 証 明 され た も の で は な く, 自分 の 結 果 の 方 が 正 しい とい う事 実 が 分 り, こ の 間 ず い 分 つ らい 思 い , や せ る思 い を して 過 ご した の も無 駄 で は な か った 。 後退をおそれずに研究に精進 しましょう(元教育学部)

東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

  • Upload
    others

  • View
    1

  • Download
    0

Embed Size (px)

Citation preview

Page 1: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

ISSN 0916-3328

東京大学アイソ トープ総合センター

VOL.26 NO. 1 1995・6・25

後 退 を お そ れ ず に 研 究 を

東 郷 正 美

長 い間お世話 に.な ったアイ ソ トープセ ソタ-とも、い よい よお別れす ることになった。

停年 を迎 え,過去をふ り返 り,今 まで歩 んで きた道 を思いお こした。 これか ら歩むべ き

道を きめ るのに良い機会であ る。 しか しい くら格好の良い ことを云 ってみて も,貧 しい能

力ゆえに,今 まで したい と思いつつ も実現で きなか った ことがで きるよ うにな る保証は ど

こに.もない。

トリチ ウムの測定を含めて, 自分の研究は一進一退 を くり返 しつつ,進む方 が退 く方 よ

りも多少 とも大 きければ,研究は遅 々と した歩みではあ って も前進 してい ることにな る。

いわば波動 しなが らも少 しずつ上昇 してい るとも云える。

考 えてみれば,人間は常に波動,あ るいは前進,後退を くり返 して生 きてい る。 例 をあ

げれば,呼吸で も空気を吸 ってはは き,吸 ってはは き してい る し,血液 だ って心臓は収縮

して大動脈へ血書夜を送 り出 し,拡張 しては血液 を肺静脈か ら入れてい る. 食事だ って食べ

ては消化 し,空腹 にな った又食べ るの くり返 しだ し,寿命がつ きる前 に子 を残 し,個人の

寿命 は有限だが, ヒ トとい う種 にとっては寿命は無限だ と信 じられてい るO

ところで, 自分 の研究の途上で,小 さな失敗は数 え きれないが,ある時,越すに越 され

ぬ大 きな壁 にぶち当た った。長い間正 しい と信 じられ, 自分 も信 じていた定説 に反す る結

果が得 られ, 自分-の研究方法 など考えつ くすべての事項で点検 してみたが,原因は分・か ら

ず, ど う解釈 して良い ものや ら見当もつかず,すでに何年 も行 って きてい るこのテーマで

の研究 をあ きらめなければな らないか とい う弱気が時には頭 をもたげた りした。 しか し他

にす ること,で きることもなか った。

数年にわた る期間,一寸 も前進 しなか った。 自分の能力の乏 しきをならずき,親を うらんで

みて も何の役にも立たないと悟 り,何の成果 も残 さずに人生を終 って も,少な くともや るべ

きことはや った,すなわち人事はつ くして天命をまつとい う思いは残 るにちがいないと月土を

くくることがで きた。そ して,それ までの研究に執念深 く,あるいは未練がま しくしがみつ

いていた ら,実は定説が未だ証明された ものではな く, 自分の結果の方が正 しいとい う事実

が分 り, この間ずい分つ らい思い,やせ る思いを して過 ごしたの も無駄ではなか った。

後退 をおそれずに研究に精進 しま しょう。 (元教育学部)

Page 2: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

2

研 究 紹介

食 べ 物 と動 物 の 成 長

竹 中 麻 子

我 々人間を含めすべての動物 にとって,食物 を摂取す ることは生命を維持 してい く上で

必要不可欠で あ ることは言 うまで もない。 この観点か らす ると,食事は動物の生体 を と り

ま く環境 の中で生命 の維持 に最 も重要な ものの一つであると考 え ることがで きる。 す なわ

ち我 々の体は,他 の環境 因子 と同様 に食事条件 に も良 く応答 して,生体 の恒常性を保 って

い るのであ る。

さて, タソバ ク質 は成長期の動物 に とって非常に重要な栄養素である。 食事に含 まれ る

タソバ ク質の質 あるいは量 が不十分だ と体 の タンパ ク質合成が抑制 され,成長期の動物 の

成長 の遅滞が起 こることは古 くか ら知 られてい る。 しか しなが ら, この一見当た り前の現

象が ど うして起 こるのか,その メカニズムは まだ良 く分か っていない。

我 々は,摂取す る タソバ ク質 の質 ・量 の好 し悪 Lに応答 して変化す る内分・泌因子 (ホル

モ ソ)が動物 の体 タソバ ク質代謝を調節 し,その結果動物 の成長 が制御 され るのではない

か と考 え,血 中濃度 が食事 タンパ ク質の変化 に よって大 きな影響 を受け るホルモ ソを検索

した。具体的には,成長期 の ラ ッ トに タソバ ク質の質が良い食事, タソバ ク質の質が悪い

食事, タンパ ク質 を含 まない食事を一週間与 えたのち,血 中のいろいろなホルモ ソ濃度を

測定 した。その結果 , イ ソス リソ様成長因子 Ⅰ(IGF-Ⅰ)とい うペプチ ドホルモ ンの血 中濃

度が食事に含 まれ る タソバ ク質 の質 ・量 に応答 して大 き く変動 し, さらに この変化 が動物

の体重増加 と非常に良 く相 関す ることを発見 した。 さらに, この際IGF-Ⅰの主要生産器官

で あ る肝臓 中のmRNA量 を測定 した と ころ,血 中濃度 と良 く対応 して変化 してい ること

が明 らか とな った。 この ことは,食事 タンパ ク質の質 ・量 の低下 がア ミノ酸 の欠乏な どの

シグナル とな って,肝臓 中のIGF-ImRNA量が豆成少 し,その結果 このホルモ ソの合成量 が

低下す る可能性 を示 してい る。 現在, この分子機構 について さらに研究を進めてい る。

一方でIGF-Ⅰは,ペプチ ドホルモ ンであ りなが ら血中でIGF結合 タソバ ク質 (IGFBinding

Protein:IGFBP)と結合 して存在 してい るのが特徴である。現在 6種塀のIGFBPが同定 さ

れてい るが, これ らのIGFBPがそれぞれ,IGF-1の寿命を延ばす,IGF-Ⅰを組織- と運搬

す る,標的組織 におけ るIGF-Ⅰの作用 を強めた り弱めた りす る, とい った役割 を果 た して

い ると考 え られてい る。 我 々は先 と同様 な動物実験 を行 い食事 タソバ ク質 に よるIGFBP

の調節 について検討 した結果,個 々のIGFBPが栄養状態 の変化 に対 して異 な る反応 を示

す ことを兄いだ した。 この ことは,それ ぞれ のIGFBPの もつ役割 を考 える上で非常 に興

味深 い。

さらに,IGF-Ⅰは,標的細胞で レセプターの 自己 リソ酸化を出発点 とす るチ ロシソキナー

ゼ カスケー ドを介 して,その作用 を発現す ると考 え られてい る。 この レセプターの各組織

での発現量 もまた タソバ ク質栄養状態の変化 に反応 してお り,多 くの組織 において, タソ

バ ク質栄養状態の低下に伴 って レセプター遺伝子発現量が増加 し, さらにIGF-Ⅰレセプター

数 も増加 していた。

これ ら一連 の結果 か ら,食事 タソバ ク質の質や量の変化 はIGF-Ⅰやその関連因子 の遺伝

子発現,mRNAの安定性,血 中での寿命 とい った さまざまな作用点 に影響 を与 えてい る

ことが明 らか とな りつつあ る(図 1)。その メカニズムをひ とつひ とつ分子 レベルで解 明す

Page 3: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

VOL.26NO.11995.6.25

ることに よって,食事 タンパ ク質に よる動物の体 タソバ ク質代謝制御 の全体像 が少 しずつ

形 をあ らわ して くると考 えている。

現在,我 々の 日常生活,あるいは成長 に必要な タソバ ク質は十分に供給 されている。 し

か し,病気や傷害,老化等によって身体の生理状態が正常でな くな った時にどの ような質 ・

量 の タンパ ク質 を とればいいのか, とい った問いには, こうした基礎研究の成果 が答えを

出す ことがで きると信 じてい る 。 (農学生命科学研究科)

食事タンパク質

3

生産組織

iGfiLgjinene州 I 一旦ヒ旦_!担史受㈱】

ーGF一一mRNA + iB,SmRNAS′ヽ ′\′ヽノヽ ′ヽ′ヽノヽ′ヽ

坦臼 ↓○ t塾▽

○ ▽/\◎J

T。 I

図 1 食事タンパク質によるIGF-1システムの調節

Page 4: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

4

ラ ン藻 の cAM P信 号 伝 達 系

大 森 正 之

今か ら10年 も前の こと,私はアイ ソ トープ総合セ ソタ-の 4階 と 2階をせ っせ と往復 し

て, ラソ藻 のア ミノ酸 に取 り込 まれ る 14Cの量を測定 していた。 もっとも4階か ら2階 に

度 々下 りて来 るのは 自発的 な休憩のためや コー ヒー タイムを楽 しむためであ った。当時私

は, アソモニア態窒素をこよるラソ藻細胞 の代謝調節 とその機構の解 明を主な研究 テーマ と

してお り,セ ソタ-を共 同利用 させていただいていたので ある。

植物や動物 を含む全ての生物は窒素栄養環境 の変化 によ り代謝的に大 きな影響を受け,

結果 と して細胞の増殖や分化 が調節 され る。 ラン藻 の細胞 にアソモ- ウムを与 えると,急

激 なATPの減少 とともに_ア ミノ酸 の合成は促進 され,窒素固定や硝酸還元は抑制 され る。

それ まで, アンモニ ウムに よる細胞 内中間代謝産物 の量的変化を調べていた私は,個 々の

代謝系の調節 には,それぞれに専用 の情報伝達機構 が働いてい るのではないか と漠然 と考

えるよ うにな った。そんな頃,基礎生物学研究所のR Iセ ンター(当時)にいた友人の蓮沼

博士か ら,植物 において もcAMP(図 1)が生理 的に意味を持つ可能

性があ るとの話を聞 き,早速,基礎生物学研究所で ラン藻のcAMP

含量 を測定 した。その結果, ラソ藻Aク∽bae拘αCyli7dn-caには50-200

pmol/mgクロロフ ィルのcAMPが含 まれてい ることが明らかとな っ

た。 さらに,細胞 を明所 か ら暗所 に移す とcAMPレベルは急激に上

昇す ること,cGMPはcAMPよ り低い レベルで しか存在 しない こと

も明 らか とな った (図 2).その後 の研究か ら, 明,晴の変化だシナで

な く,好気,嫌気条件 の変化 やpHの変化, イオ ソ濃度 の変化 な ど

によって も細胞内cAMP含量はすばや く増減す ることが明らかとな っ 0-チ- 0 0H

てい る。

それ までcAMPの良い定量法 が無 く,植物細胞 におけ るcAMPの

存在 その もの も明確 に証 明 されていなか ったが,

放射性 の 125Ⅰを用 いた ラジオイム ノア ッセイ法 の

導入中こよって微量のcAMPの定量 が可能 とな った

のである. よ くもまあ こんなにわずかな量を正確

に測定で きるものだ と感心 した次第であ る。 現在

ではエンザイムイム ノア ッセイ法 に よるcAMPの

定量 も行われ るよ うにな った。

cAMPは1950年代,米国のSutherlandに よ り発

見 されて以来,動物 におけ る情報伝達系 のセ カン

ドメ ッセ ンジャーと して良 く研究 されてい る.私

達の血糖値はcAMPによ り調節 されているグリコ-

ゲ ソフォスフオ リラ-ゼの活性の変化 をこよ り微妙

に コソ トロール されてい ることは良 く知 られてい

る。 植物では,cAMPの存在 が長 い こと確認 され

なか った た め に,cAMP依 存 性 の信 号伝 達機 構

(cAMPカスケー ド)については全 く研究 されてい

(丁(lLIUぎ

l)]OuJd)(I)d

M93)0(〇.●)d三VU

m

~0

図 1 cAMP

5 10 15

Time(min)

図 2 光照射終了直後のアナベナに

おけるcAMP,cGMP量の変化 1)

○:引き続 き光を照射

●,■ :暗所

Page 5: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

γOL.26NO.11995.6.25

ない。私達 が観察 した細胞 内cAMPレベルの急激 な変化は,光合成独立栄養生物であるラ

ソ藻 にもcAMPカスケー ドが存在す ることを示唆 している.

さて,次 に ラソ藻におけ るcAMP合成酵素であるアデニル酸 シクラーゼ(Cya)の単離 と

解析を考えた。 しか し, ラン藻の信号伝達に関与す るタソバ ク質はその量が少な く,単離,

精製はかな り困難である可能性が高い。そ こでCyaの遺伝子を単離 してその構造を解析す

ることに した。まず,A.cylidn'caのケリ ムDNA

の断片を挿入 した大腸菌のプラス ミドを,CAMP

合成能を欠 く大腸菌株 (Cya遺伝子欠損株)に導

入 し,cAMP合成能を回復 した株か らCya遺伝

子を単離 した。次に, この遺伝子の全塩基配列

を決定 し,推定 され るア ミノ酸配列か らラン藻

のCyaと他の生物のCyaの構造を比較検討 した。

その結果,A.CylindricaのCyaは,N末端 と中

央部附近に膜貫通領域を含む,動物 などで普通

に存在するCyaと良 く似た構造を示 した(図 3)。

大腸菌のCyaと似た構造は全 く示 さない ことが

明 らかとな った。同 じ原核生物であ りなが ら,

ラソ藻 と大腸菌ではずい分異なったCyaを持 っ

ているものであ る。 ラン藻のcAMPカスケー ド

は動物のそれの祖先型 とも言えるものだろ うか。

一方,最近私達は運動性を持つラン藻SiduiyuZ

COOH

図 3 アデニル酸シクラーゼの推定構造

参考文献2)より改変

platensisはcAMPによってその運動が促進 され ることを観察 している。 この ラソ藻か らCya

の遺伝子を単離 したところ, 6つの異 な った遺伝子が得 られた。その うちのあるものは膜

貫通性であ り, しか もタンパ ク質のある部分は,バ クテ リアで良 く知 られてい る信号受容

タンパ ク質 (センサー)と良 く似たア ミノ酸配列を持 っていた。

動物的なのか と思えばバ クテ リア的であった り, ラン藻のcAMPカスケー ドは一体 どの

よ うなものなのだろ うか。私達の研究はまだ始 まったばか りであ り,今後一つ一つ謎を解

きほ ぐさねばな らない。そ していつの 日か,窒素環境の変化による代謝調節機構 も信号伝

達の側面か ら解 明され ることを期待 したい。 (教養学部生命環境科学系 ・生物)

[参考文献]

1)M.Ohmori,K.Ohmori&K.Hasunuma,Arch.Microbiol.150(1988)203

2)M .Katayama,Y.Wada&M.Ohmori,∫.Bacteriol.177(1995)impress.

5

Page 6: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

6

自己紹介高 橋 文 雄

今度 4月 1日の人事異動で医学部か らアイソ トープ総合センター

-配置換 えにな りま した高橋文雄です 。 どうぞ宜 しくお隣 いいた し

ます。未知なる世界に入 ることはい ささか梼樺 もし,不安 もあ りま

したが,中に入 って見 るとそ うで もな く,若 く明るい健康そ うな笑

顔 に接す ることが出来 ま して不安な思いは一時的 とは言え払拭 され

ま した 。

私の東京大学での歩みは,昭和41年 1月に伝染病研究所 (現医科

学研究所)に奉職 した ことには じま ります。名称か ら想像す るとい

かにも恐 ろ しい所かこ感 じられ ま したが,緑が多 く,運動施設 も当時 としては整 ってお り楽

しさの余 り外局-は出よ うとは思いませんで した。12年余 り公私共に指導,教育を受けた

学舎,多芸,多才な先輩達が多 く今で も懐か しい思い出の研究所であ りま した。時代の趨

勢か異動の話 も立 ち消えにな っていた私にも異動の話があ り,異動の不安を抱 きなが ら昭

和53年工学部電気,電子工学科-異動,生物的な面か ら工学的な物の見方で多 くの事が ら

を教えていただ き学 びま した。

安住す る間 もな く,昭和56年,冬の厳 しさと言 った ら言い ようのないほど寒い(零下30

度に近い),東京天文台野辺 山宇宙観測所 (長野県)へ,天体観測は望遠鏡で観測す るのが

常識 と思 っていた私 せこは想像 もつかない天体か らの電波を捕 らえ観測す ると言います。見

学者 (観光客)の多い ことには驚 きま した。

思い出の多い野辺山を後に昭和59年工学部航空学科 (現航空宇宙工学科)-,想像か らす

ると勇 ましい男子の職場 と思 っていま したが入 って見 ると,か弱い女性だけの職場で大変

親切に していただ きま した。長す ぎた (5年)航空学科か ら平成元年薬学部へ 日頃薬にはお

世話になってい るのでそ う動揺す ることもな く転入す ることが出来ま した。

薬学部でR I室の管理 の大変なことをお金の面を含め思い知 らされ ま した。仕事の楽 し

さを覚え始めた矢先,平成 4年医学部-の転任が決 ま りま した。医学部は所帯 も大 きく守

備範囲 も広 く(基礎系,保健,本院,分院,医科研,分生研)大変だと思いま したが,多 く

の先輩,同僚 に助け られ楽 しく過 ごさせて頂 きま した。

いよいよ最後平成 7年 4月愉快な仲間の多いR Iセ ソタ-の皆 さんと一緒 に仕事をさせ

ていただ くことにな りま した。見 ること,聞 くこと戸惑いの多い ことで,皆様には ご迷惑

を掛け-ることと思い ますが,一 日も早 く対応出来 るよ う努力いた しますので よろ しくお願

いいた します。以上が,私の拙い大学での放浪の旅をかいつまんで紹介 させて頂 きま した。

恒例にな ってい る出生地等紹介ですが,かつて 日本のチベ ットと言われた岩手県です 。

町は線がい っぱいの雫石町です。南部片富士 と言われ る岩手山を北に,南に南昌山と景

観溢れ る山間の町で岩手山の麓には小岩井農場があ りジソギスカソはとて も美味 しいです。

この盆地を流れ る川が雫石州で盛岡市の南で北上川 と合流 します。山菜が豊富で川魚 も多

い町で したが,今は ど う変わ っているのか,知 る由もあ りませんが,今 もきっと収穫の多

い宝庫だと思 ってい ます。

趣味は野球観戦 (弱い阪神 ファン),卓球,将棋はそ こそ こ出来 ますので宜 しく。

(アイソ トープ総合セソター)

Page 7: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

VOL.26NO.11995.6.25

学 内 RI管理メモ

「放射性同位元素等による放射線障害の防止

に関する法律」の改正

平成 7年 3月31日付けで 「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関す る法律」が

改正 され公布 された。改正 された内容の うち関連のあるものは次のとお りであるが,実際

に施行 (実施)され る時期は, この公布 日か ら6ケ月以内に公布 され る政令に定め られ るた

め,現在は未定である。

1.使用の許可 (承認)及 び届出並びに販売の業,廃棄の業に新たに賃貸の業 (レンタル)

を加 えた。

2.許可 (承認)証訂正申請を廃止 し,変更申請の際に許可 (承.認)証の訂正を同時に行 う。

(法第10粂第 4項関連)

3.表示付放射性同位元素装備機器のみを設置す る施設におけ.る免除

(1) 同施設 におけ る測定 (法第20条関連)

従来,放射線障害のおそれのあるときのみに測定す るものを免除す る。

(2) 同施設 に立ち入 る者に対す る教育訓練 (法第22条関連)

従来,教育訓練 と して 1時間以上行 うこととなっていた ものを免除す る。

(3) 同施設のみを設置す る事業所の放射線取扱主任者の選任 (法第34粂関連)

従来,第 2種 (特定)を取得 した者又は第 2種 (一般)若 しくは第 1種を取得 した者

を選任す ることとな っていた ものを免除す る。

T 0 PICS

「大学等放射線施設協議会」設立される

全国の国公私立大学等の放射線施設で,教育研究等に用い られ るアイ ソ トープな らびに

放射線の安全管理に関わ る教職員が,その連携を密に し放射線安全管理に関す る諸情報の

交換 な らびに研修を行い,会員相互の資質の向上を図ることによ り放射線施設の安全を確

保す ることを 目的 と して,文部省の支援を得て 『大学等放射線施設協議会』が設立 され る

ことにな り, 6月 9日に東京で設立総会が開催 され,会則等の承認,役員の選出が行われ

た 。

当 日は,文部省か ら,大学の教育研究用放射線施設を担当す る学術国際局学術情報課の

木島課長 らが出席 し,祝辞 が述べ られた。

同協議会の事務局は東京大学 アイ ソ トープ総合セソタ一に置かれ ることにな り,会員の

募集などの準備が進め られている。 詳細は次号に紹介 され る予定。

7

Page 8: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

8

●センター 日誌

平成 7年 3月17日

4月10日

4月11日

5月10日

6月 8日

教育訓練の実施

平成 7年 5月15日~17日

5月19日

5月24日~26日

5月29日

6月14日~16日

6月19日~21日

平成 7年 4月13日~18日

(4日間)

4月26日

6月 6日~ 6月15日

(5日間)

6月21日~ 7月 6日

(6日間)

●人事消息

○昇 任 (平成 7年 4月 1日)

○退 職 (平成 7年 3月31日)

○採 用 (平成 7年 4月 1日)

○酉己置換 (平成 7年 4月 1日)

○転 任 (平成 7年 5月 1日)

平成 6年度第 ⅠⅠⅠ期共 同利用終了

共 同利用 ガイ ダンス実施

平成 7年度第 Ⅰ期共 同利用開始

共 同利用 ガイダンス実施

第19回全 国国立大学 アイ ソ トープセソター長会議

於 KKRホテル東京

第62回R Iコース新規放射線取扱者講習会

第48回Ⅹ線 コース新規放射線取扱者講習会

第63回R Iコース新規放射線取扱者講習会

第49回Ⅹ線 コース新規放射線取扱者講習会

第11回診療放射線 コース,第 8回核医学 コース

第12回診療放射線 コース,第 9回核医学 コース

理学部生物学科学生実習

理学部地学科地質鉱物学教室学生実習

農学部農業生物学科学生実習

工学部 システム量子工学科学生実習

助手 野川 憲夫

事務主任 中村 兼治 (定年退職)

技術補佐 員 中谷 祐一 (生物部門)

技術補佐 員 鎌 田有紀子 (化学部門)

技術補佐 員 海野 英昭 (化学部門)

事務主任 高橋 文雄 (医学部 よ り)

庶務掛 酒井 芳夫

(東京外国語大学庶務課職員係-)

庶務掛 有野 浩

(東京入国管理局出入国審査部 門 よ り)

○客員研究員 (平成 7年 4月 1日~ 8年 3月31日)

大橋

佐藤

瀧上

永井

本 田

森川

●委 員会だよ り

○臨時運営委員会

○ セ ソタ-ニ ュース編集委員会

国雄 (千葉大学薬学部)

純 (明治大学理工学部)

豊 (関東学園大学法学部)

尚生 (日本大学文理学部)

雅 裡(日本大学文理学部)

尚威 (相模中央化学研究所)

平成 7年 4月25日(火)開催

平成 7年 5月15日(月)開催

Page 9: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

VOL.26NO.11995.6.25

●委 員会 名簿

○ アイ ソ トープ総合 セ ンター運営委員 会委員名簿 (平成 7年 4月 1日~平成 9年 3月31日)

部 局 官 職 氏 名 備 考

医 教 授 青 木 要 朗 委員長 (セ ンター長 )

病 院 教 授 ☆佐 々木 康 人

分 院 助教授 町 田 徹

工 教 授 ☆石 樽 顔 書

哩 教 護受 富 永 健

農 助教授 中 西 友 子

教 養 教 授 兵 頭 俊 夫

薬 助教授 辻 勉

医 科 研 助教授 大 海 忍

生 研 教 授 山 本 良 一

分 生 研 教 授 鶴 尾 隆

核 研 教 授 ☆柴 田 徳 思

物 性 研 教 授 毛 利 信 男

海 洋 研 助教授 ** % - *

原子 力 セ ソ タ- 助教授 小佐 古 敏 荘

保健 セ ソタ- 講 師 岡 崎 具 樹

アイ ソ トープ 教 授 巻 出 義 紘

☆ :幹事会委員

○ セ ン ターニ ュース編集委 員会委員名簿 (平成 7年 4月 1日~平成 8年 3月31日)

[委 員 ]

◎ 兵 頭

西

教養学部物理学

(◎ は委員長 )

(93-6519)Fax3485-2904

農学部放射性 同 位元素施設 ・・-・・・-・.・- (内線5441)ra又5689-7297

工学部材料学科 (内線7156)

大学 院理学系研究科 ・理学 部鉱物学 - (内線4547)llax3816-5714

R I総 合 セ ン ター化学部 門--・---- (内線2887)

〟 事務 主任 ------ (内線2895)Fax3816-0422

9

Page 10: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

10

東京大学7イソ トープ総合センターニュース

目 次

巻 頭 言

後退 をおそれずに研究を

研究紹介

食べ物 と動物 の成長

ラ ソ藻 のcAMP信号伝達系

自己紹介

東郷 正美 -・1

竹中 麻子 - 2

大森 正之 -・4

高橋 文雄 -・6

学 内 R l管理 メモ

「放射性 同位元素等 による放射線障害の防止に関す る法律」の改正---・---・-・7

T0P ICS

「大学等放射線施設協議会」設立 され る

セ ソタ- 日誌

人事消息

委員会 だ よ り

委員会名簿

編集後記

前 々回のニ ュースで依頼 よ りも大幅に長い原稿を寄稿 したため (?)か,今回か

ら編集委員 を させていただ くことに.な りま した。以前か ら研究紹介は よ く読む方

で,今 回の校正 の作業中に も大変興味深 く原稿 を読 ませていただき ま した。寒冷

地では陸上晴乳動物 は大型化す るとい う(ベル クマ ンの)規則があるけ ど例外 も多

く,竹 中先生 の蛋 白質 と動物 の成長 の研究紹介を拝読 して,その原因の一つはや

は り食べ物 のせいだろ うか ?と思 った り, また大森先生の窒素環境の変化 に よる

ラ ソ藻 の代謝変化 の研究紹介を拝読 して, ミクロキステス (諏訪湖な どで繁殖 し

てい る藻 の一種)が富栄養化 によ り当孟毒 を もつ よ うになる(又は繁殖す るよ うにな

る)とい う話 を思い出 しま した。それに高橋 さんの 自己紹介か ら, イー- トブ(宮

沢賢治 の童話 で岩手 山)が身近 に迫 ってい る景色を思い浮 かべた りしてい ます。

も う一 つ編集 の仕事 をや っていて楽 しいのは, セ ンターな どで顔見知 りの方 々に

ついて原稿依額 を通 じてその方の研究 内容 を詳 しく知 ることがで きるとい うこと

です。 ど うぞ宜 しくお顔い致 します。 (豊 田和弘)

7

8

8

8

9

東京大学 アイ ソ トープ総合 セ ンターニ ュース VOL.26NO.1 1995年 6月25日発行 編集発行人 高橋 文雄

〒113東京都文京 区弥生 2丁 目11番16号 東京大学 アイ ソ トープ総合 セ ソタ一 ・電代表 (3812)2111内線2881

Page 11: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

ISSN 0916-3328

東京大学アイソ トープ総合センター

VOL.26 NO.2 1995・9・25

R Iか らの 語 りか け

野 崎 正

ミイ ラのなかで 5千年生 き延びて きた 14C原子で も,今朝誕生 した 14C原子で も,今後

の運命は全 く同一である。 R Iには老化はな く,突如死に遭遇す るのだ。 これは羨 ま しい

ともいえる。 また,RIの壊変定数が一切の外的因子に影響 されない事実は,諸行無常の

この世の中で,北極星 と同 じような絶対性のけ.だか さを語 りかけているように思える。

かつて私はGaAs中の 1ppbまでの酸素を 160(3He,p)18F反応 によ り荷電粒子放射化

分析す るため, 18Fをマ トリクスか ら生ず る放射性の臭素や ヒ素か ら分離す るのに大変苦

労 した。ついにKBF4と して沈殿分離 し, これをAgBrとZn(OH)2に よるScavengeを と

りいれた再結晶に よ り精製 し,消滅放射線の同時計数 によ り純粋な 18Fの壊変曲線を得 る

ことが出来た。 こんな曲線 こそ 自然の本質である単純な美を表現 しているよ うに思えてな

らなか った。

私 が40年余 りR Iと付 き合 っている うちに,R I利用に対す る社会的期待はかな り変化

した。現在 もっとも活発な利用はinvivo核医学診断で, llCの よ うな短寿命核種の標識化

合物 を人体授与 し,断層撮像などに よ り,診断やユニー クな研究がなされてい る。 llCの

半減期は20分・で, 1分間に3.5%減衰 し,200分後には千分の一にな って しま う. 一生懸命

に標識合成 していると, この減衰の速 さが切実に身に しみて くる。

さて,一昨年の全世界の経済成長率 がち ょうど3.5%だそ うだ。 この成長率 を保持 し続

け ると,200年後には千倍の経済規模 になる.社会現象で も,LeChatelier-Brownの法則

や生体のホメオスタシスの ようなフィー ドバ ック機構が作動す るだろ う。 だが, これをも

強引に打ち砕いて突 き進めば,-ルマゲ ドン-突入す るに違いない。 こんな無謀な行為を,

現在の権力者や経済関連著名人は煽 りたててはいないだろ うか。短寿命 R Iの壊変を実測

して,指数関数の実感を万人が体得す るための教育の機会を持 ちたい ものだ020世紀末に

生存す るわれわれにと り, 自然の-_員であるR Iの語 らいを も十分に聞 き入れなが ら,今

こそ人≡頃千年の計の骨子を打立てねばな らない時ではなかろ うか。

(元 理化学研究所)

Page 12: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

2

研究紹介大気中の微量ハロカーボン類の高感度検出

須 藤 重 人,富 永 健,巻 出 義 紘

米国 カ リフォルニア大学の ローラソ ド教授 らに よって,CFC(クロロフルオ ロカーボン )

塀の成層圏をこおけ るオゾン層破壊の可能性が指摘 されて以来,- ロカーボ ン額の うちのい

くつかの化学種 (特定 フロソ,- ロソ等)が, モ ソ トリオール議定書 に基づ く生産 ・消費の

規制対象 とな った。一方, これ らフロソ≡頃以外 に一酸化二窒素,臭化 メチル,塩化 メチル

等について もオ ゾソ層破壊の可能性が指摘 されてい るが,大気中の濃度分布や挙動に関す

る情報 が不足 してお り,その挙動が注 目されてい る。 本研究では, と くに臭化 メチルの濃

度測定方法 について改善 をすすめてい る。 臭化 メチル (CH3Br)は,食品の燥薫や土壌の殺

菌等に用 い られてい るが,海洋など天然 に も発生源 があるとされ,地球全体の生成消滅の

収支が未だは っき りしない物質である。

この大気中の臭化 メチルの濃度測定 には,電子捕獲型検 出器 (ECD,63Ni使用)を有す る

ガス クロマ トグラフ(GC)装置を使用す る。測定 には,全金属製の捕集容器 に採取 した大

気試料 を用 い る。 都市大気は上野公園で採取 し,バ ックグラウソ ド試料は毎年北海道で夏

及 び冬 に採取 して きた大気試料を使用 し,経年変化 を調べてい る。

測定 装置 は, ア イ ソ トープ総合 セ ンターの質量分析装置室 に設置 されたECD/GCを用

いて製作 した (図 1)。金属容器 に捕集 した大気試料 の一部 を真空 ライソで低温濃縮 し,壁

秦,酸素等の大気主成分 を取 り除いたのち,GCで分離 し,- ロカーボ ソ額 をECDで検 出

す る。

大気 中の- ロカーボ ン顆濃度は数pptv(pptv-10~12V/V)か ら数100pptvレベル と極 め

て低 く, ロー カルな発生源や装置か らの汚染 に よる影響を受けやすい.特 に臭化 メチルは

水溶性 が高 く,真空 ライソ内での吸着 が起 きやすいので,測定の再現性を よ くす るのに注

意が必要であ る。 さらに臭化 メチルは他 の- ロカーボンに比較 して も濃度が低い(フロソ11

は約300pptv,臭化 メチルは数10pptv)。 クロマ トグラム上で も臭化 メチルは沸点の近いCFC-

図 1 分析装置図

Page 13: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

VOL.26NO.21995.9.25

114とCFC-11の間 に位置す るので,再現

性の よい定量分析には完全分・離が不可欠で

あ る(図 2)0CFC-114か らCFC-11に至 る

物質の沸点は 0℃付近で非常に近接 してお

り,GCに よる分離 も極 めて難 しい。 本研

究では, 2台のカラム恒温槽で 2本の分離

カラムの温度を別 々に制御す ることをこよっ

て この問題を解決 した。

現在,定量分析を 目指 して最適測定条件

を検討 してい る段階なので, ここではGC

における分離条件の設定について報告す る。

図 1の よ うかこGCの分離 カラムは, 1種額

の前段 カラムと2種額の後段 カラムの組み

合わせ となっている。前段で大 まかな分離

NT-IU 寸 7-†一・一■IUlilU

LLU ~ 1-摘 告I, U●●、. II...I..-I■●●●■

10 15 20 25保持時間 (分)

図 2 都市大気試料のクロマ トグラム

1995年 7月 6日,上野公園で採取,大気試

料量 :24mlSTP,カラム 1:PorapakQ

2mm4×1.0m (60-110℃昇温,12℃/分),

カラム2:PorapakQ2mm 声×1.5m(130℃),

キャリヤーガス :窒素40ml/分,ECD300℃

を行い低沸点成分 と高沸点成分を分離 し,低沸点成分 (N20などの無機 ガス炉)は後段 カラ

ム 1(UnibeadsC)-,高沸点成分は後段 カラム 2(PorapakQ)-導入す る. この方法によ

り,貴重 な大気試料の一回の導入で無機 ガスか ら- ロカーボンに至 る多種の化学種を同時

かこ測定す ることがで きるO また,無機 ガス炉は吸着性が乏 しいのでその分離には非常に吸

着能の高い充塀剤を要す るが,高沸点成分に対 しては これ らの充填斉粥ま吸着力が強す ぎて

使用で きない. これ らの問題点は 2種塀のカラムの使用 によって解決で きた。

さらに精密に温度条件を設定す ることによって,臭化 メチル周辺の完全分離が可能となっ

た (図 2)。 今後定量に関す る再現性の検討を進め,よ り精度の高い分析方法を確立 したい。

(大学院理学系研究科化学専攻 ・アイ ソ トープ総合セソタ-)

表 面 汚 染 検 査 と測 定 シス テ ム

小 泉 好 延,野 川 憲 夫,松 岡 克 治

当センターの表面汚染検査は二十数年間,継続 して同 じ方法で行われてきた。 ここでは,

保管 されて きたデータ例 を示 しなが ら,汚染検査の方法 と測定 システムについて述べ る。

放射性物質を使 う実験や作業場所の表面汚染の検査は床や器材などの表面汚染を拭 き取

る方法 (smearmethod)検査 が一般的である。 表面を紙や布でふ き,それを放射線検 出器

で測定す る方法である。セ ソタ-では,実験者が使用の度に行 うサーベイメー タによる検

査 とは別途に,床汚染の定期検査に この方法を使 ってい る。 この検査 データは法規上の汚

染判断-こ使われているだレナでな く,各実験室の状態や汚染の拡大防止対策,実験手法の改

善な どにおおいに参考 となるものである。本セ ンターでは検査 データを この よ う改善策に

活用す るため,ス ミヤ検査試料の放射能測定は低 レベルの測定装置を使用 し,信頼の高い

測定に心 がシナて きた.二十数年間行われたス ミヤ検査は関係す る部門の努力 もあって,今

日まで同一の測定装置で測定 され,約10万に近い検査 データを全て記録,保存す る事がで

きた。

3

Page 14: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

4

〔検査方法〕

床 のふ き取 り面積は100cm2で行 ってい る。 検査位置 と頻度は,管理区域 内の各階廊下,

エ レベ ー タ前 ,実験室内お よび ドア外 な どに106ヶ所の定点を置 き,週 2回の定点 と毎月

行 う定点 とを組み合わせてい る。 た とえ実験者が現場のサーベイメー タ検査で汚染を捉え

損 な って も,施設 内では 3日以内に汚染の発見を行 うことがで きる。 実験室外 のス リッパ

交換 に よる拡大防止 とこの検査 によって,実験室外の管理区域の汚染拡大を防止で きる。

多数 の実験者 が多様 な核種 を使 う共同利用施設 において,汚染の早期発見は発生場所や原

因,汚染核種 の同定 な どにとって大変重要であ る。

〔測定装置 と信頼性の確認〕

二十数年 間使用 して きた測定装置 はAloka-modeIPDC-801で あ る。10回を越 える電気

回路修理 と 2度の検 出器周辺部の研磨,検出器内部の表面再処理によ り,検出器のバ ック ・

グラウソ ド上昇を抑えて きた。 この検査装置は部品の欠乏に噸 ぎなが ら現在 も稼働 している。

測定装置は 27T型 ガスフローGM検出装置であ り,ア ソチ ,・コイソシデソス法によ りバ ッ

ク ・グラウン ド計数 が 3cpm前後 の低 バ ック ・グラウソ ド検 出器で あ る。 試料数30の 自

動交換式で,低 エネルギーの β線 も測定で きるよ うに窓無 しGM検 出器 と して使用 してい

る。 また,試料測定は 1サイ クル30試料の測定毎に, 2回のバ ック ・グラウソ ドと3つの

14C標 準線源 の測定 を行 ってい るO 結果 が法規 に基 づ く汚染管理 に使用 され るのは もとよ

り,低 レベルの測定 によって得 られ るデー タがバ ック ・グラウン ドとの有為差の検定や汚

染 と判断で きないが注 目して観察 して行 く場所や,管理区域 内全体 の状態,実験室別の傾

向把握 など軒こも使われ る。

試料 の測定時間は 5分間であ る。 測定前の試料は床 のふ き取 りに よって,ス ミヤ波紋 に

付着す る突起状の塵による検出器の放電を防 ぐため, レ トラコー トグロス(商品名)スプ レー

処理 を行 い, また,短寿命の ラ ドソ崩壊核種 の影響を妨 ぐため数時間放置 した後に測定 し

てい る。 ス ミヤ渡紙 サイズは 1インチ径で,試料 の検 出効率は 3H,14C,32Pに対 して,そ

れぞれ19%,51%,61%である。

図 1-図 5は測定装置のバ ック ・グラウソ ドと 14C標準線源 の測定 デー タ,廊下系統,

実験室 内などの検査結果である。

0

9

8

7

6

5

・4一3

21▲

1

(YvdU)

A

A

△1982年

●1992年

A

A A A A AA AA● ▲. A AAAAAAA AAA●A A

AA AA A AAAIA ● A AA● A●●・'~・。・・・。・・・̂'・.・・・ム・・●●・J・●・・・.・・・・・・・●●… ・

2 4 6 810121416182022242628303234363840424446485052

(週単位)

図 1 検出器のバック ・グラウン ド値

1982年度と1992年度のデータを示す.1982年度の平均値は 1例を除けば4±

lcpmであった。1992年度は検出器周辺の研磨などの除染により, 3cpm

とな り,装置の初期状態に戻すことができた。

Page 15: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

VOL.26NO.21995.9.25

80

70餌

5

1

1-一1

1

1

(yvdU)

30

20

10

00

1

t・⊥l

i

1

A

A

人_∧l

●●△■

AA●●

∧lA

●●●皇△●■

q

++Al

●△●】●i

A

△●●

△■●

●△

・●暮

Al一●1■ム凸l

2

2

MOVLn

WHunh

1

1

A

t】●●

△▲Ti.仝i;i…:.:;辛

A

AAA ■

2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 22 24 26 28 30

(週単位)

図 2 標準線源による検出器の安定性

バ ック ・グラウソ ドと同様に,14C標準線源に よ り1982年度,1992年度の測

定結果 を示 した。1982年度の平均値170±5.8epm に比べて,1992年度 の平

均値は-6%の160cpm とな ったが, 1回の例外を除けば全て 2シグマの範

囲にあ り,長期にわた って測定効率が安定であった。

○管理区域外 ●エレベーター内 △ lF □ 2F ◇3F x4F *Bl

9

QU

7

6

5

4

3

2

1

(M

d

3

)静

00S;

80

70

50

20

10

0

(

Md

U)

浄戴

二 十 ∴ ●̀∴十 ∴ 、∴

24 6 810121416182022242628303234363840424446485052

(週単位)

図 3 管理区域内外の検査結果

1992年度の各階エ レベータ前 と管理区域外の検査結果を示す。

1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 41 43 45 47 49 51

(週単位)

図 4 1982年度の 4階非密封実験室の床汚染検査結果

5

Page 16: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

6

5

0

‖H

=

(Md

U)線

溶走

1 3 5 7 9 ll 13 15 17 19 21 23 25 27 29 31 33 35 37 39 41 43 45 47 49 51

(週単位)

図 5 1982年度 4階廊下の汚染検査結果

図 4に示 した1982年 8月および1983年 2月の汚染は,通常値の30倍および10

倍の汚染であったが,ここで示 した同じ階の検査では同レベルの汚染が生 じ

ていない。実験室内外で実験者の履き物を交換 しているため,実験室内に汚

染が留まったと考えられる。また,この汚染は除染が行われ,通常 レベルに

回復 した。

(アイソ トープ総合セソタ-)

自己紹介

C:..i.LIT[欄

‥叫.)

有 野 浩

どうも, こんにちは,有野 浩 と申 します。生 まれ も育ちも埼玉

であ ります。今回省庁が変わ るのを横に,東京に引越 して きました.

以前の役所には実家か ら通 っていましたが,朝の 6時半には家を出

ないと間に合わない程遠い所に住んでいま した。現在住んでい る所

も,職場にめちゃめちゃ近い訳ではないのですが,今 まで と比較す

れば,随分余裕があ ります。

以前の職場では,外国人相手にパスポー トに再入国のスタソプを

押す事が,主な仕事で した。毎 日が戦争のような職場であ りました。

話が変わ りますが, とにか く大のスポーツ好 きであ りま して,小学校では剣道,中学校

では野球,高校の時はバ レーを,大学時代は趣味で水泳をや っていま した.水泳は,現在

で も仕事の帰 りなど行 っています。

周囲か らは鈍感の よ うに見 られがちですが,け っこう涙 もろい所があ りま して,映画を

見 るのが好 きなので, よ く行 くのですが,だいたい泣 きが入 ります。

ドライブが好 きで念願 のマイカーを購入 しま したが,現在 ローソ地獄の其最中であ りま

す。け っこういい車だと自画 自賛 してい ます。

このよ うに,あた りさわ りのない文章 に終始 しま したが, これか らも何卒 よろ しくお願

いいた します。 (アイ ソ トープ総合セソタ-庶務掛)

Page 17: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

VOL.26NO.21995.9.25

C

',.7,二

..11

-

1.(..i

海 野 英 昭

今年の 4月か ら化学部門で技術補佐員 と して働 いてい ます。現在

東京理科大学 2部理学部化学科 3年 に在学 中です。出身は三重県の

津市 と言 う所で,海 まで 自転車で飛ば して 5分・位 の所 に住 んでいた

ので,昔は よ く海へ釣 りに行 ってい ま した。今は豊島区に住 んでい

ます。

自分は空手が好 きで,高校の時は道場-通 っていました。今はや っ

てい ませんが,いつか黒帯を取 りたいです。 まだ仕事は未熟ですが,

頑張 ります。宜 しくお願い します。

(アイ ソ トープ総合セ ンター化学部門)

享三享==国立大学アイソ トープセンター長会議の開催 と

国立大学アイソ トープ総合センター会議の設立

巻 出 義 紘

国立15大学のアイ ソ トープ総合セ ンターか らなる第19回セ ンター長会議が,東京大学 ア

イ ソ トープ総合セ ソタ-の当番をこよ り, 6月 8日,東京 ・大手町のKKRホテル東京 (国家

公務員共済竹橋会館)で開催 された。なお東京大学が担当す るのは昭和60年 (第 9回)以来10

年ぶ りであ った。

同会議 には文部省か ら学術国際局学術情報課木島課長,金 田課長補佐,横山学術資料係

長 の出席 を得て,全 アイ ソ トープ総合 セソタ-のセンター長,専任教官,事務担当者 らに

よ り, アイ ソ トープ総合セ ソタ-の諸問題について報告 な らびに協議 がなされた。議事に

先立 ち,文部省木島課長か ら,大学に.おけ る放射性同位元素の利用増大 に対応 した放射線

安全管理 お よび教育研究の充実 を図 るためのセソターお よび放射線施設の整備や概算要求

写真 1 センター長会議全景

7

Page 18: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

8

の状況について紹介があ った。

議事 に入 り,報告事項 と して

1・各 アイ ソ トープ総合セ ンターの現状 と将来展望

2・放射性同位元素等取扱施設教職員研修の実施

3・大学等におけ る放射性同位元素等の安全管理

(改善策の提案 と要望)第 5次,第 6次報告書提 出

4・放射線防護設備 の整備状況 に関す る調査

協議事項 と して

1. 「国立大学 アイ ソ トープ総合セ ソタ-会議」設立

2. 「大学等放射線施設協議会」設立

3・来年度の放射性 同位元素等取扱施設教職員研修

4・概算要求におけ るセ ソタ-共通重点事項

5.今後 のアイ ソ トープ総合 セ ソタ-のあ り方

な どが主要 な課題 と して報告,意見交換 された。

その中で,今回 と くに重要 な審議課

題 は,「国立大学 アイ ソ トープ総 合 セ

ンター会議」の設立であ った。

国立学校設置法施行規則の一部改正

に よ り,昭和45年 4月をこ東京大学 にア

イ ソ トープ総合セ ンターが設置 されて

以降,翌年 の京都大学 か ら今年度 の広

島大学 まで,計15国立大学中二アイソ トー

プ総合 セ ソタ-が設置 されて きたが,

アイ ソ トープ総合セ ンター全体 の組織

と しての名称,規則,役員な どが定 め

られていなか った。組.織の構想や規則 ・

細則案が先立 って検討 され,今回のセ

ンター長会議で,各 セ ンターを会員 と

す る組織 と して 「国立大学 アイ ソ トー

プ総合セ ンター会議」の設立 が承認 さ

れた。なお,役員 と して,東京大学,

京都大学,東北大学,名古屋大学,大

阪大学 の 5大学が幹事校 に選 出 され,

会長校 には東京大学,副会長校 には東

北大学 が選 出 された。

また,来年度,平成 8年秋 に文部省

と共催で開催 され る放射性同位元素等

写真 2 文部省学術情報課木島課長挨拶

写真 3 東京大学富永センター長挨拶取扱施設教職員研修 は,平成 3年度 に

続 いて東京大学 アイ ソ トープ総合 セ ソタ-が担 当す ることにな った。大学のアイソ トープ

取扱施設 におけ る放射線管理業務 の向上 な らびに各種放射線管理実務 におけ.る高感度化,

高精度化 にな ど関す る講義 と実習,総合討論 などに よ り構成す る予定である。

(アイ ソ トープ総合セソタ-)

Page 19: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

ⅤOL.26NO.21995.9.25

T0PJCS

『大学等放射線施設協議会』設立総会ならびに 『大学等の

放射線施設における地震対策』講習会開催 される

巻 出 義 紘

全国の国公私立大学等の教育研究用放射線施設および関係す る教職員を会員 とす る 『大

学等放射線施設協議会』が文部省 の支援 を得て設立 され ることにな り, 6月 9日,KKR

ホテル東京において設立総会が開催 され,会則等の承認,役員の選出が行われた。初代会

長 には京都大学の栗原紀夫教授が選出 され,事務局は東京大学 アイ ソ トープ総合センター

に置かれ ることにな った。

当 日は,文部省か ら来賓 と して, これ ら大学の放射線施設を担当す る学術国際局学術情

報課の木島課長 らが出席 し,祝辞が述べ られた。

また,同総会に引続 き,阪神大震災の経験を踏 まえた 『大学等の放射線施設におけ る地

震対策』についての講習会が開催 された。

全国の国立大学,公立大学,私立大学,および文部省所管の国立研究機関等か ら,会場

の定員を上回る200名近 くが出席 し,第 2会場を吉削ナてテ レビ中継 された。

この 『大学等放射線施設協議会』は,全国の国公私立大学等において,教育,研究等に

アイソ トープおよび放射線を使用す る施設,な らびに放射線の安全管理 に関わ る教職員が,

団体会員な らびに個人会員 と して参加 し,その連携を密に し,放射線安全管理 に関す る諸

情報の交換 な らびに研修を行い,会

員の レベル向上を図 り,放射線施設

の安全を確保す ることを 目的 と して

設立 された.その 日的達成のためをこ

以下の事業が行われ る。

1.大学等をこおけ る放射線安全管

理に関す る情報の周知,研修

2.大学等におけ る放射線安全管

理に関す る調査,研究,報告

3.大学等におけ る放射線安全管

理に関わ る会員間の情報交換

4.文部省,科学技術庁等の関係

省庁 との連絡,協議,および

会員への情報伝達

5.関係学術団体 との連絡,協力

具体的な活動 としては以下の もの

が予定 されている。

研修会の開催 :会員が一堂に会 して,

相互の意見交換 を行い,最新の技術

や研究成果を修得す るとともに,関

係省庁や関係学術団体等か ら担 当官

写真 1 大学等放射線施設協議会設立総会主会場

前列右より,栗原会長,久保寺副会長

写真 2 大学等放射線施設協議会設立総会主会場

前列左より,来賓の文部省学術情報課木島課長,

金田課長補佐

9

Page 20: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

10

や講師を適宜招いて,諸情報の交換

を行 う。通常は毎年 1回開嘩するが,

法令改正など特別な場合は随時開催

し, また各地区において も適宜開催

す る 。 来年度は,平成 8年 8月27日

(火)に東京大学大講堂(安 田講堂)で

開催が予定 されてい る 。

委員会等の活動 :大学等における放

射線の安全管理に関す る重要な問題

等が生 じ,緊急の調査や研究が必要

になった場合などに,適宜委員会を

設置 し,集中的に活動を行 う。

会報の発行 :会員相互の情報,関係

省庁や関係学術団体等か ら得 られた

有用な情報,研修会において紹介 さ

れた最新情報 など,大学等における

放射線管理にとって重要で有益な情

報を掲載 し,会員に広 く知 らせ る。

会員名簿の発行と情報連絡網の整備 :

大学等かこおけ る放射線施設をこおいて

放射線管理 に関わ る教職員が,放射

線管理上の諸問題についての相談や

会員相互の連絡の便宜のため,会員

名簿を充実す るとともに,将来的をこ

はインターネ ット等の電子情報網をこ

写真 3 約40名が,テレビ中継 された

第 2会場で設立総会に参加

写真 4 同協議全巻出事務局長からの趣 旨説明

写真 5 大学等の放射線施設における地震対策講習会

よ り最新情報を随時閲覧 ・入手で き

るように整備す る 。

書籍等の刊行 :委員会等での調査や研究の成果など,相当量のまとまった情報 ・知識等に

ついては,その内容を書籍 として刊行す る。 また,大学等におけ る放射線管理の実際等に

ついて記述 したマニ ュアル等を書籍 と して刊行す る。

関係省庁への要望書等の提出 :大学等における放射線施設の実状に基づき,文部省や科学

技術庁等の関係省庁に,放射線施設の整備 ・充実についての要望や,関係法令およびその

運用についての提案など,要望書等を提出す る。

その他 :本会の議決機関 としての総会の開催,会員相互や関係諸団体 との交流のための集

会,広報等のための講演会, さらに見学会等を開催す る 。

東京大学では,団体会員 として各部局の施設が部局長名で加入す ることが望 まれ,団体

会員会費を校費払いで きるように大学事務局 と手続 きを確認中であ る 。 また,放射線の安

全管理に関わ る教職員がで きるだけ多 く個人会員 として加入す ることが望 まれている。

(アイソ トープ総合センター)

Page 21: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

VOL.26NO.21995.9.25

学 内 R J管理 メモ

●センター日誌

平成 7年 7月14日

9月4日

9月 4日

教育訓練 の実施

平成 7年 7月17日

7月18日~20日

平成 7年 9月 4 日~ 14日

●人事消息

○退 職 (平成 7年 7月31日)

○採 用 (平成 7年 8月 1日)

●委 員会 だよ り

○運営委員会

○センターニ ュース編集委員会

平成 7年度第 Ⅰ期共 同利用終 了

平成 7年度第 ⅠⅠ期共 同利用開始

共 同利用 ガイダンス実施

第50回Ⅹ線 コース新規放射線取扱者講 習会

第64回R Iコース新規放射線取扱者講 習会

理学部化学科学生実習

事務補佐員 野川 順子 (業務掛)

事務補佐員 加藤 明子 (業務掛)

平成 7年 7月11日(火)開催

平成 7年 7月19日(火)開催

ll

Page 22: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

東京大学アイソ トープ総合センターニュース

目 次

巻 頭 言

RIか らの語・りかシナ

研究紹介

大気中の微量- ロカーボソ塀の高感度検 出

12

野崎 正 - 1

須藤 重人 ・富永 健 ・巻出 義紘 - 2

表面汚染検査 と測定 システム ---・-・-・小泉 好延 ・野川 憲夫 ・松岡 克治 - 3

自己紹介

有野 浩 ・海野 英昭 - 6

報 告

国立大学 アイ ソ トープセンター長会議の開催 と国立大学 アイ ソ トープ総合セソタ一会

議の設立

TOPICS

巻出 義紘 - 7

「大学等放射線施設協議会」設立総会な らびに「大学等の放射線施設における地震対策」

講習会開催 され る

学 内 R l管理メモ

セ ソ タ一 日

人事消息

委員会 だ よ り

巻出 義紘 - 9

1

1

l

1

1

1

1

1

編集後記

生物のみな らず有機,無機物質の多 くの物性が,棲微量に含 まれ る元素の種額,

量 かこ左右 され ることは広 く知 られている。 例 えば,其銀製 トラソペ ットの音色を

昔の ものをこ近づけ る為に,わ ざわ ざ銅 と亜鉛以外の不純物 を添加す ることも微量

元素の役割 を認識 した結果であろ う。 しか し,それが有用 かど うかは別 と して,

個 々の微量元素の役割についての知識は未だ不十分・である。

放射能の利用価値 のひとつに,普通は測定不可能な量,極端な話原子の個数の

レベルでの検出が可能で, さらにその放射能を放出 した元素の特定が容易なこと

かこあ る。 つま り,放射能を道具 と して用 いることによ り微量元素の役割を知 るこ

とが可能 となるわけである。放射性元素が,天然に存在す るものに しろ人工的な

ものに しろこれは同 じであ る。 我 々は この掛け替えのない道具の利用をポジテ ィ

ブな もの と して受け とめてい る. しか し,マスコミで取 り上げ られ る際,多 くの

場合, この道具の価値感が変わ るよ うな気がす る。 この内外価格差 を解消す るの

ち "アイ ソ トープセ ンターニ ュースの課題''の一つであると胆に銘 じてO

(森岡 正名)

東京大学 アイ ソ トープ総合 セ ンターニ ュース VOL.26NO・2 1995年 9月25日発行 編集発行人 高橋 文雄

〒113東京都 文京 区弥生 2丁 目11番16号 東京大学 アイ ソ トープ総合 セ ソタ一 ・電代表 (3812)2111内線2881

Page 23: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

ISSN 0916-3328

東京大学アイソ トープ総合センター

VOL.26NO.3 1995・12・25

加速器共同利用機関の放射線管理

近 藤 健次郎

基礎科学や応用分野をこおけ る加速器の利用 は近年 目ざま しいものがあ ります。"加速器

の時代" と言われ るよ うに,様 々な加速器の利用が盛んに進め られています。中で も大型

加速器の利用は主に経済的な理 由か ら,拠点 となる加速器施設を多 くの利用者が共同利用

す る形で行われています。高エネルギー物理学研究所はわが国の大規模加速器施設の文部

省所轄共同利用機関第 1号 と して,国内外の多 くの研究者に利用 されてお ります。 この施

設の放射線管理を行 ってい る立場か ら, 日頃感 じている点を 2,3述べたいと思います。

本所利用者は所属す る事業所で業務従事者の認定を受け, さらに本所が行 う加速器施設

の放射線安全教育を受けて初めて施設利用が出来 ることにな ります。 5千人を越える共同

利用者の中には,数 カ所の共同利用施設を渡 り鳥の様に利用す る研究者が相当数に上 って

い ます。最近の,共同利用施設の整備 と併せ, この様 な利用形態は今後一層増 えるものと

考え られ ます。共同研究機関の放射線管理を行 っている関係者の間で, この様 な渡 り鳥的

な利用者を含む不特定多数の利用者の従事者登録,被爆管理並びに安全教育を,少ないマ

ンパ ワーで,かつ合理的に行 うために,全国的に統一 した放射線管理 システムの導入が必

要 にな って きているとの意見が多 く聞かれ ます。 また現状では放射線業務従事者の認定が

法的に出来ない多 くの大学や研究機関の研究者が,本所のよ うな共同利用機関を利用す る

ことが出来 る道を開 くことは早急に解決すべ き事柄で, このことは研究分野の一層の拡大

と活性化 かこつなが るものです。

従来放射線安全教育訓練は放射性同位元素の取扱いを中心に行われていますが,放射光

施設等の加速器だけを利用す る者に対す る放射線安全教育については, もう少 し内容に工

夫が必要ではないかと考 えています。大規模加速器共同利用検閲の放射線管理は どうある

べ きか議論のあるところです。`̀加速器の時代"の到来 と言われ るように,その利用は益々

盛 んにな って きてお り,限 られたマンパ ワーで放射線管理担当者の安全確保のための一層

の創意,工夫が要求 されています。 (高エネルギー物理学研究所)

Page 24: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

2

研究紹介レーザー加熱 40A r-39A r年代測定法で

岩石の形成年代を調べる

岩 由 尚 能 1)・瀧 上 豊 2)・兼 岡 一 郎 1)

我 々年代研究 グル ープではアイ ソ トープ総合センターに連続発振が可能なアル ゴソイオ

ソ レーザーと高感度磁場型質量分・析計 を設置 し,1994年か らレーザー加熱 49Ar-39Ar年代

測定法の実験 を開始 したので報告す る。

40Ar-39Ar年代測定法はK-Ar年代測定法の発展型である。K-Ar法は 40K(半減期12.5億

午)が 40Arに壊変す る事 を利用 し,岩石 に含 まれてい る 40K,40Arの量比か ら年代値 を求

め る。 Kが地殻の岩石に普遍的に含 まれ ること,半減期が適当な長 さであることなどの理

由か ら広 く利用 されてい る。 しか しなが らK-Ar法には,試料 の変質や岩石形成後の二次

的 な加熱 によるAr損失 に よる年代値 の若返 りがチ ェ ックで きない,岩石が冷却す る際に

取 り込 まれたArの同位体比が大気 と等 しい とい う仮定 が成 り立たない場合は地質学的に

意味のあ る年代値 を示 さない,な どの弱点 があ る。40Ar-39Ar法 はK-Ar法 と同 じ原理 を

利用す るが, K定量 の代 わ りに岩石試料-の速 中性子照射 を行 う。その際 39K(n,p)39Ar

反応に よって生 じる 39Arと放射起源 40Arとの同位体比に よって年代値が求め られ る。Ar

同位体比 だけで年代値が得 られ るので,試料 中のArの一部分 だけを取 り出 して年代測定

す ることが可能であ る。 そのため段階的に温度を変えて試料か らガスを抽出 し,各温度段

階で年代値を得 る段階加熱法 を用 い ることがで きる。段階加熱法では各温度での年代値の

変化のパ ター ソを検討す ることに よって,試料の一部に二次的な年代の若返 りがあ って も

元の年代値を推定す ること●が可能である。 またアイソクロソ(等時線)を引 くことによ り,

岩石形成時に岩石に取 り込 まれたAr同位体比を知 ることもで きる。

これ まで我 々はアイ ソ トープ総合セ ソタ-地下の電気炉室に設置 してある高周波加熱炉

を利用 して,南極隈石や海洋玄武岩, イ ン ド ・デ カソ高原の岩石 などの試料 の 40Ar-39Ar

年代測定 を行 って きた。 高周波炉で数mg~ 1g程度の岩石試料 を溶融 し,抽出 したガス

のAr同位体分析にはオ ンライソで接続 されてい る希 ガス用の質量分析計 を使用す るとい

うシステムで一 日一試料 のペースでの測定 が可能である。一方,極微量分析や局所分析が

可能な レーザー加熱法を用いた 40Ar-39Ar年代測定の報告が近年増加 して きた。 レーザー

加熱 40Ar-39Ar法には高周波加熱炉 を用 いた試料融解法 と比べ,以下 のよ うなメ リットが

あ る。 まず加熱す る領域 が試料周辺に限定 され るためブランク(加熱 に よって試料以外か

ら放出 され るガス)が少量ですみ,非放射起源Arの割合を減少 させ ることがで きる。 試料

の加熱に要す る時間が短 い(高周波炉では45-60分, レーザー照射では 5分・程度)。試料を

顕微鏡下で観 察 しなが らAr抽出が出来 るので,試料中の変質を受けていない部分 を選択

的 に加熱 して年代を得 ることも可能である。 これ らの結果,精度が良 く信頼性の高い年代

値 を効率 よ く得 ることがで きる。我 々の研究 グループでは1993年 か ら1994年 にかけてアル

ゴソイオ ソレーザー と高感度の希 ガス用質量分析計を導入 し, レーザー加熱 40Ar-39Ar年

代測定 の実験 を開始 した。

レーザー加熱法で得 られ る希 ガスの量は高周波炉加熱法で得 られ るよ りも少ないため,

これ までの分析系 とは別 に容積の小 さい レーザー加熱法用 の真空系を作製 した(図 1)。試

料 を レーザーで 5分 か ら10分程度加熱 して得 られたガスは,Tiサブ リメ- シ ョソポ ソプ

Page 25: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

VOL.26NO.31995.12.25

を使 って希ガスのみに純化 された後,

質量分析計 に導入 され る。質量分析

計はパ ー ソナル コソピュー ターで制

御 されて お り,Arを含 む希 ガス同

位体の 自動測定が可能であ る。

これ まで にK-Ar法や高周波加 熱

に よる 40Ar-39Ar法で年代 が求め ら

れてい る試料 について,一回の レー

ザー照射で試料か らガスを回収す る

全溶融法,および レーザーの出力を

変化 させて温度を変 え段階的にガス

を抽出す る段階加熱法で年代測定 を

行い, システムの信頼性のチ ェック

を行 った。試料 には年代標準試料 の

520.4Ma(1Ma:百万年前)の角 閃

石,ll.6Maの黒雲母 と,高周波加

熱 40Ar-39Ar法で年代 を求めた南極

の閃長岩 か ら分離 した508.7Maの

レーザー

三° ,!

○ □ :メタルバルブ

IP:イオンポンプ;TMP:ターボ分子ポンプRP:ロータリーポンプ:TiSP:TiサブリメーションポンプIG:ヌードイオンゲージ;VG-3600:質量分析計

図 l レーザーシステムの概念図

黒雲母 を使用 した。全溶融法での測定の結果, レーザー加熱法を用いて得 られた年代値は

年代標準試料 の文献値や過去の 40Ar-39Ar年代値 と誤差 の範囲内で一致 した (衰 1)。 しか

し年代値 の誤差は10%近 くあ り,高周波加熱 を用いた 40Ar139Ar法での誤差 よ りも大 きい。

これは試料 か らのガス量 が不十分 な ことが原因 と考 え られ る。 レーザーを用 いた段階加熱

法では全溶融法 よ りもガス量が減少す ることか ら更に精度が悪 くな り,文献値 との一致 も

悪 くな った。 しか しなが ら,現在 の レーザー加熱法の システムかこは容積の点で改善 の余地

があ り, これを修正す る事によって精度 を上げたい と考 えてい る。 また試料の加熱に必要

な時間が短縮 され ることに よ り,測定効率が大 き く上昇す ることが明 らかにな った。

我 々の レーザー加熱 40Ar-39Ar法 の技術 はル ーチ ソ測定 には まだ不十分で あ るが,今後

システムの改良を行い実験 を重ね ることかこよって改善 され るであろ う。その際 には これ ま

での高周波炉を用 いた年代測定 の経験 が活用 され ると考 えてい る。

表 l レーザー加熱法による40Ar-39Ar年代測定例

試 料 年 代 値 年代の文献値(Ma) (Ma)

黒雲母(年代標準試料) 10.9± 1.1 ll.6±0.4

黒雲母(南極閃長石試料) 522.4±25.3 508.7±9.0

角閃石(年代標準試料) 526.9二と17.4 520.4±1.7

(1)地震研究所 ・ 2)アイ ソ トープ総合セ ンター客員研究員)

3

Page 26: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

4

機器紹介陽電子消滅 2光子 2次元角相関装置

永 井 康 介 1)・兵 頭 俊 夫 2)

アイ ソ トープ総合セ ンターのポジ トロン装置室に,陽電子消滅 2光子 2次元角相関装置

を製作 しま したので,紹介 します。

電子 の反粒子である陽電子は,物質中の電子 と対消滅を起 こし,光子 (γ線)にな ります。

特 に, 2光子 に消滅す る場合, 2本の γ線 の間の角度は,消滅時の電子 ・陽電子対のエネ

ルギー と運動量 を保存す るよ うをこ決 ま ります。 このため, 2本の γ線の角度分布を測定す

ることに よって,電子 ・陽電子対 の運動量分布 p(盲)を知 ることがで きます。 このよ うな

測定法 を 2光子角相関法 といい, 3次元運動量分布の 2成分について積分 した

N(pz)-N p(盲)dpxdpy

を測定す る 1次元角相関装置 と, γ線 の進行方向の成分 (px成分)について しか積分 しない

N(py・pz)-Ip(盲)dpx

を測定す る2次元角相関装置の 2種煩があ ります。 もちろん, 2次元装置の方が詳 しい情

報 を与 えて くれ ます。 ポジ トロソ装置室には20年前をこ設置 された 1次元装置 もあ りますが,

ここで紹介す るのは,位置敏感 γ線検 出器を用 いた 2次元装置ですo

装置全体の構成 を図 1かこ示 します。本装置の特徴は,新たに開発 した位置敏感 γ線検 出

器にあ ります。浜松ホ トニクス製位置敏感光電子増倍管(R3941)に,細い柱状の高密度のBGO

シンチ レー ター525個 を束ねて取 り付けた もので,非常 に コンパ ク トで,高検 出効率です

(位置分解能は約2.7mm)。出力は,位置情報 を持 ったアノー ド信号 と, タイ ミソグ用 の

速い ダイノー ド信号があ り,光電子増倍管のベースにはプ リアソプも内蔵 されてい ます。

試料 と検 出器 の距離は 5mで,十分・な角度範 囲をカバー して測定す るために,検 出器は可

動台 に装着 して あ ります (一方 は水平可動 (図2(a)),他方は垂 直可動 (図2(b)))。試料室

(図2(C))には,電磁石 で最高16kGaussの磁場 がかけ られ ます。 また,陽電子線源は試料

室の真空系の外 に装着 します。

図 1 装置全体の構成

Page 27: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

VOL.26NO.31995.12.25

(a) (b) (C)

図 2 (a)水平可動検出器部,(b)垂直可動検出器部,(C)試料室周辺

「~~~-「計測回路 (図 1の; !内)は,デ ィス ク リミネー タ, フ ァース トコイソシデ ソス,デ ィレ

イ ・ゲー トジェネ レー タ(以上NIM), アナ ログ ・デジタル コソバー タ(CAMAC),パ ソコ

ソか ら成 ります。 ダイノー ド信号を用いて 2本の γ線の コイソシデソスをと り,それをゲー

トかこして,アノー ド信号をAD変換 し,パ ソコンにイペ ソ トモー ドで取 り込み ます。

現在,陽電子線源 と しては,1.1GBqの 22Naを用 いてい ますが,毎秒70-80の コイ ソ

シデソスイベ ン トを検 出 し, 3- 4日で 1つの運動量分布の測定が可能です。

得 られ るスペ ク トルの例 を図 3に示 します。図3(a)は14Kにおけ るヨウ化 カ リウム(KI)

の 2次元角相関スペ ク トルです。試料 内で生成 した ポジ トロニ ウム(電子 と陽電子 か らな

る水素原子様束縛状態 )が, 自由なプ ロ ッホ波 と して存在 してい ることを示す鋭い ピー ク

が見 られ ます. 同図 (b)は, 同 じ試料 の297Kにおけ るスペ ク トルで, ポジ トロニ ウムが

自己捕獲 され るため,運動量分布の幅が広 くな って しまった ことがわか ります。

(a) (b)

図 3 Klの 2次元角相関 (a)14K,(b)297K

(1)大学院理学系研究科物理学専攻 , 2)教養学部相関基礎科学系)

5

Page 28: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

6

自己紹介加 藤 明 子

8月 1日よ り新規採用 とな り,,保健 セ ソタ-管理室-出向勤務 し

ています加藤 明子です。

私には特技 があ ります !それは,何年人生 をや ってい るのか ?と

言われ るほどの方向オ ンチなのです。 地下鉄等の右 も左 も同 じ作 り

の所は もちろん,初めての所では,地 図を見ているのに もかかわ ら

ず,80%は逆 の方向を進 んで しま うのです。 おかげで, この根津付

近 は一通 り歩 く事がで きま した。

性格は名前の通 り明 るい人です。好奇心 も多 く,色々な事にチ ャ

レンジ してみたい と思 ってい ます。最近の趣味は,オー トキ ャンプ,スキー,テニス等で

す (しか し運動 オソチで もあ ります)。 同趣味の方,何かあ りま した ら,一言声 をかけて下

さい 。

こんな私ですが, 明るさと好奇心でがんば って行 こうと思 ってい ますので よろ しくお願

い します。 (アイ ソ トープ総合 セソタ-業務掛)

学 内 R l管理 メ モ

法 令 改 正 に つ い て

平成 7年 3月31日付けで 「放射性 同位元素等による放射線障害の防止に関す る法律」が

改正 された後, 9月18日付け, 9月25日付け,及び 9月29日付けで,それぞれ政令,総理

府令 (施行規則),及 び告示が改正 された。

すで にVol.26No.1(平成 7年 6月25日発行)のニ ュースで 3月31日改正の内容について

紹介 したが, 9月をこ改正 された もの と合わせて大学 に関連のある内容 かこついて, ここに紹

介す る。

1.使用 の許可及 び届 出並びに販売の業,廃棄の業に新たに賃貸の業 (レンタル)が追加 さ

れた。ただ し,賃貸業著か ら賃貸す る場合は,賃貸す る放射性 同位元素について,すで

に承認又は届 出を受けているもので なければな らない。

2.承認証訂正 申請 を廃止 し,変更申請の際に訂正を同時に行 う。 (法第10条第 4号関連)

3.表示付放射性同位元素装備機器のみを設置す る施設におけ る測定 が免除 された。

(学 内では 3事業所 が該当す る。)(法第20条関連)

従来,使用開始前及 び開始後は放射線障害のおそれのあるときのみに測定す るものが

免除 された。

4.表示付放射性同位元素装備機器のみを設置す る事業所について次の事項が追加 された。

(学 内では 1事業所 が該当す る。)

(1) 放射線取扱主任者選任の免除 (法第34条関連)

従来,第 2種 (特定)を取得 した者又は第 2種 (一般)若 しくは第 1種 を取得 した者 を

選任す ることとな っていた ものが免除 された。予防規定の変更が必要。

(2) 施設 に立 ち入 る者 に対す る教育訓練 (法第22条関連)

Page 29: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

VOL.26NO.31995.12.25

従 来,教育訓練 と して 1時間以上行 うこととな っていた ものが免除 され た。

(3) 注 意事項 の掲示 (則第 15粂 関係 )

法令で定 め られた注 意事項 を当該装置 を設置す る室及 び装置 に掲示す ること

(4)放射線管理状 況報 告書 の様式 が定 め られ た。

5.予防規定 に定 め る事項 と して,次 の 2項 目が追加 され た。 (則第21粂 関係 )

(1)地震 , 火災 そ の他 の災害 が起 こった と きの措 置 (粂 文 中の次項 目の措 置 を除 く。)に

関す ること

(2) 放射線管理 の状 況 の報 告 に関す ること

6・上記 1か ら3まで,及 び 4-(1),(2)は平成 7年 9月30日か ら適用 され る。

4-(3)については,平成 7年12月31日まで に注意事項 を掲示 しなければ な らない。

5をこついては,平成 8年 6月30日まで に変 更 した予防規定 を届 出なければ な らない。

なお, 内容 の詳細 について は,前述 の 日付 の官報及 びISOTOPENEWS1995年10月号 を

参照 して下 さい。各部局 の管理担 当者 をこは,別途通知 を します。

今回の法令改正によ り各部局が実施 しなければならない事項

対 象 内 容 実 施 時 期 .期 限

使用承翠を受けて (D変更申請の際に,承認証 (原本)を添付するo (∋平成 7年 9月30日か ら(参平成 8年 6月30日までい る部 局(承認証 [2]を所有 している部 ②予防規定の見直 し一一地震,火災等の災害時の局) 措置について [5-(1)] に届出るo

5-(2)管厘状況の報告については,既に全部局 とも処理済みですo

使用承認を受け, ①当該装置に係 る測定を行わな くてよいo ①平成 7年 9月30日か ら

表示付ガスクロマトゲララ装置を所有 して い る部 局(先端科学技術研究セソタ一,工学那,農学部のみ) [3]

表示付ガスクロマ (∋放射線の量の測定は行わな くてよいo[3] (D平成 7年 9月30日から

卜グラフ装置のみ (勤当該装置を使用する者の教育訓練の必要がないo (彰平成 7年 9月30日か ら③平成 7年 9月30日か ら(参平成 7年12月31日まで

を所有 している部 [4-(2)]局 (環境安全研究 (塾放射線取扱主任者の選任をす る必要がないoセソタ-のみ) [4-(1)]

④当該装置及び当該装置を使用する室に注意事項を掲示す るo[4-(3)] せこ実施す るo

⑤管理状況の報告は管理状況報告書 (表示付ECD ⑤平成 7年度の報告書かのみを使用する届出使用者)を使用するo[4-(3)] ら

⑥予防規定を変更 し,届出るo ⑥平成 8年 6月30日まで主任者の選任,代理者の選任,測定,教育訓練 に届出る○

予防規定の変更,表示付ガスクロマ トグラフ装置のみを使用する者に対する教育訓練については,学内の統一を図る必要があるため,調整等を行 った後,変更が必要な事項については別途,通知 しますので,指示があるまでは変更の作業等を行わないように して下 さい。

●センター日誌

平成 7年10月19日~20日

12月15日

教 育訓練 の実施

平成 7年10月 2日~ 4日

11月27日~30日

放射性 同位元素等施設教職員研修

(文部省,京都大学放射性 同位元素 セ ンター共催,

於 京都大学放射性 同位 元素 セ ンター)

平成 7年度第 ⅠⅠ期共 同利用終 了

第65回R Iコース新規放射線取扱者講 習会

第66回R Iコース新規放射線取扱者講習会

7

Page 30: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

8

11月29日~30日

12月15日

12月15日

平成 7年 9月21日~22日

9月23日~10月31日

12月 5日,12日

第 5回英語 RIコース新規放射線取扱者講習会

第51回Ⅹ線 コース新規放射線取扱者講習会

第 2回英語 Ⅹ線 コース新規放射線取扱者講習会

医学部保健科学生実習

農学部農芸化学科学生実習

教養学部 (医学部医学科進学予定者)学生実習

●委 員会だよ り

○ セ ンターニ ュース編集委員会 平成 7年10月25日(水)開催

東京大学アイソ トープ総合センターニュース

目 次

巻 頭 言

加速器共 同利用機関の放射線管理

研究紹介

レーザー加熱49Ar-39Ar年代測定法で岩石 の形成年代を調べ る

近藤健次郎 - 1

岩 田 尚能 ・瀧上 豊 ・兼岡 一郎 - 2

機器紹介

陽電子消滅 2光子 2次元角相関装置 ---------- 永井 康介 ・兵頭 俊夫 - 4

自己紹介

加藤 明子 - 6

学 内 R I管理 メモ

法令改正 について

セ ソタ- 日記

委員会 だ よ り

遠藤 正志 - 6

編集後記

本セ ンターニ ュースの編集では,色 々な人に原稿 を依頼す ることが大 きな仕事

の一つであ る。 アイ ソ トープを用いた研究は今や理工系 のみ な らず文科系で もあ

りとあ らゆ る分野 に広が り, もはや欠かせない手段 とな ってい る。用い られ る核

種 も, ともす ると遺伝子工学で用い られ る32Pのみが 目立 ちがちであ るが,今回

の年代測定 に用 い られてい る核種の よ うに広が りつつあ るよ うに思える。 このよ

うに, アイ ソ トープその ものの研究 よ りもアイ ソ トープを用 いた応用研究が益 々

盛 んにな って きた現在,数多 くの核種 が使用可能で,かつ全学の種 々の分野の人

が利用 している本セ ソタ-の重要性が改めて強 く感 じられ る。 そ して,本セソタ-

ニ ュースがアイ ソ トープを用 い る新 しい研究の情報 の交換場 とな ってい くことを

期待 したい。 (中西 友子)

東京大学 アイ ソ トープ総合 セ ソタ-ニ ュース VOL.26NO.3 1995年12月25日発行 編集発行人 高橋 文雄

〒113東京都文京 区弥生 2丁 目11番16号 東京大学 アイ ソ トープ総合 セ ソタ一 ・電代表 (3812)2111内線2881

Page 31: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

ISSN 0916-3328

東京大学アイソ トープ総合センター

VOL.26 NO.4 1996.3・25

25年 目のアイソ トープ総合センター

富 永 健

A.H.Becquerelが ウランの放射能を発見 したのは,1896年 3月の ことで今年はそれか

ら100年 目にあた る。 また,W.C.R.6ntgenに よるⅩ線の発見 もその前年の11月の ことで

ある。 最近わが国で も海外で も関係方面で これ らを記念す る企画が 目につ くが,アイソ トー

プ ・放射線の研究 に携わ る者 にとって この 1世紀間の進歩 には陛 目すべ きものがある。 ま

た,東京大学 のアイ ソ トープ総合セ ソタ-は昭和45年度に誕生 し,昭和46年建物が竣工 し

たので,セソタ一軒ことって も今年は25周年 とい う節 目にあた ってい る。

昭和63年か ら3年半全学放射線安全委員会委員長,引 き続 き4年間 アイ ソ トープ総合セ

ソタ-長 と大変責任 の重い仕事を引 き受けて釆たが, この 3月で停年退官 とな り,漸 く肩

の荷 を下 ろ した感 がある。 委員長時代には,病院のR I問題が発生 し,その後本学のRI

安全管理の抜本的な見直 しに取 り組 まねばな らなか ったが,セ ンター長 の任期の間は 「無

事 これ名馬」をモ ッ トーをこセ ソタ一職員諸氏の協力を得て まず順調をこ勤め上げ ることがで

きた。内外の関係者の ご支援 に心か ら謝意を表 したい。最近,国立大学 アイ ソ トープ総合

セ ソタ-会議の発足 な ど全国的な体制 も整備 されたが,今後 のわが国のアイ ソ トープセ ン

ターのあ り方に宿題 も少 な くない。 また,東大がキ ャソパ ス問題をは じめ変動期を迎 えつ

つあ る中で,本 アイ ソ トープ総合セ ソタ-の将来像は どの よ うになるであろ うか。

私のアイ ソ トープとのつ きあいは,大学院時代の,理研 のサイ クロ トロンや原研の 1号

炉(JRR-1)を用 いた ホ ッ トア トム化学 の研究 に始 ま り,その後 メスバ ウア-分光法や放

射化分析の さまざまな応用 か ら近年の中間子化学 まで40年 に近い。 しか し,その間にアイ

ソ トープ研究や研究者の スペ ク トルは大 き く変わ り,今 日では物理 ・化学 よ りも医 ・薬 ・

農 ・生物系での応用 が主 にな って きたO 数年前すですここの欄 に書いた ことだが, この よ う

な応用研究の盛況の反面,基礎的な研究や開発 を担 う核 ・放射化学の退潮が海外で もわが

国で も顕在化 し, 氏Iの安全管理や教育訓練を実施す る側 の人材の確保や再生産がゆ くゆ

くど うなるのか憂慮 されてい る。 将来は, この よ うな面で もアイ ソ トープ総合センターに

新たな役割が期待 され るのであろ うか。

東大を去 るにあた り,い ささかの感慨 を こめて,期待や杷憂 (?)を一言のべ させていた

だいた。本アイ ソ トープ総合セ ンターの今後一層の発展を祈 りつつ筆をお く。

(アイ ソ トープ総合セ ソタ-長)

Page 32: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

2

研究紹介ナノ空間に合成 された鉄錯体のキャラクタリゼーション :

メスバウア-分光法によるアプローチ

薬 袋 佳 孝

メスバ ウア-分光法は無機化合物や錯体 を対象 とす るばか りでな く,触媒 などの複雑な

物質系 のキ ャラクタ リゼ- シ ョソにも有効であ る1)。著者の属す るグループではゼオ ライ

ト細孔 内に合成 した鉄錯体 のキ ャラクタ リゼ-シ ョソに メスバ ウア-分光法 を応用 して来

たので, これについて紹介す る。

ゼオ ライ トはアル ミノ珪酸塩の一種であ り, ナノメー タースケールの空間を持つ。 この

空間を物質合成の場 と して利用す ることによ り,孤立 した分子 を細孔 による空間的な制約

を受けた状態で存在 させ ることが可能 となる。 この よ うな異常な存在状態が通常の錯塩に

はみ られない特異な性質を細孔 内の錯体に付与す る可能性がある。

図 1にY型ゼオ ライ トの細孔 (内径1・3nm)内に合成 した トリス(2-ア ミノメチル)ピリジ

ソ鉄 (ⅠⅠ)の メスバ ウアースペク トルを示す 2)。 この錯体 は温度等に よ りス ピン状態 が変化

す るス ピソクスオーバー錯体 と して知 られてい る。 メスバ ウアースペ ク トルの温度変化等

か ら得 られた錯体の ス ピソクロスオーバー挙動 は多結晶粉末の場合 とは明 らかに異なって

いた。高ス ピン状態 と低 ス ピソ状態におけ る錯体構造の相違 が この錯体では知 られている。

ゼオ ライ ト空間に よる立体的な規制が特定の構造の安定化 を もた らし,多結晶の場合とは

異 なるス ピソクロスオーバー挙動を示 した と考 え られ る。

ゼオ ライ ト細孔空間による規制が錯体構造に どの よ うに影響す るか検討す るために,系

統的 に大 きさが異 な る一連 の鉄錯体 (エチ レソジア ミソ, (2-ア ミノメチル)ピリジソ, ど

ピ リジン,1,10-7 ェナ ソ トロ リソなどを配位子 と した)を細孔 内で合成 した。 ビピリジ

-4 -2 0 2

速度/mms~1

4

(%)喝常

夜晋

29

100

日日=

-

-

-4 -2 0 2 4

速度/mms~1

図 1 トリス(2-ア ミノメチル)ピリジン鉄(ⅠⅠ)のメスバウアースペク トル :(a)

過塩素酸塩(293K),(b)Y型ゼオライ ト細孔内の錯体(293K),(C)過塩素

鞍塩(78K),(d)Y型ゼオライ ト細孔内の錯体(78K)2)

Page 33: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

VOL.26NO.41996.3.25

ソや1,10-フェナ ソ トロ リソな どのか さ高い

配位子 との トリス錯体では, メスバ ウアース

ペ ク トル (図 2)か ら得 られ る四極分裂 などの

パ ラメー ターは多結晶の場合 とは明 らかに異

なる値 を示 した 3)。 同様 の配位構造を とるが

細孔 に対 しては るかに小 さいエチ レンジア ミ

ソ錯体な どでは この よ うなパ ラメーターの変

化はみ とめ られなか った。 ビピリジンや1,10-

フェナン トロ リンな どの錯体では,ゼオ ライ

ト細孔 による空間的な規制 に よって錯体構造

に歪みが生 じた とみ られ る。ゼオ ライ ト細孔

を結ぶチ ャソネルの配置 を考慮す ると,チ ャ

ンネル部に配位子の一部 が突 き出 した形で こ

れ らの錯体 が存在す ると推定 された。 この構

造は通常の錯塩 とは異 な るものであ り,特異

な錯体構造 がゼオ ライ ト細孔 によ り安定化 さ

れた と考 え られ る。

以上の研究例で,細孔 内の錯体は構造的に

異常 な状態 をとる場合があ り, ス ピン状態な

(%)地溝友

一l r2 0 2 4

速度/mms~1

図 2 トリスビピリジン鉄(ⅠⅠ)轟音体のメスバ

ウアー スペク トル :(a)過塩素酸塩,

(b)Y型ゼオライ ト細孔内の錯体3)

どの物性かこもその影響が及ぶ ことが示 された。

この ような構造異常は錯体 の反応性にも影響 している。例 えば,細孔内の トリス(1,10-フェ

ナン トロ リン)秩 (ⅠⅠ)の熱分・解は通常の錯塩 とは異なる過程で進行す ることが明 らかとな っ

た 4)0

構造の異常を伴わない場合で もゼオ ライ ト細孔 内の錯体 に特異 な反応性がみ られ る場合

がある。 Y型ゼオ ライ ト細孔 内に平面錯体であ るフタロシアニ ン鉄 (ⅠⅠ)を合成 したが, メ

スバ ウアーバ ラメー ターは多結晶錯塩 の場合 と同一で あ った 5)。 この錯体は ピ リジン等 と

安定 な付加体を生成す ることが知 られている。 しか し,錯体 を細孔 内で合成 した場合には

付加体の生成率が抑制 され ることが兄い出 された。 また,鉄の担持量 などの合成条件 を変

えることに よって抑制の度合いを制御す ることも可能であ った 5,6)。 これは, ゼオ ライ ト

細孔 内の酸点の数や細孔 内での錯体の配置が合成条件 に よって変わ り, これが錯体の反応

性に影響す るため と考 え られ る。 この物質系 についてはESRによる銅錯体 のキ ャラクタ リ

ゼ-シ ョソの結果 と合わせて,細孔内の錯体の存在状態 が詳細 にわた って明 らかにな りつ

つある。

以上のよ うに, ナノ空間における錯体の特異な振 る舞いを明 らかにす る上で メスバ ウア-

分光法は大 き く貢献 して きた。今後 も, ナノ空間での錯体 の触媒機構 の解 明などに広 く適

用 されて行 くもの と期待 され る。

[文 献]

1)薬袋佳孝,表面科学 7,177(1986)

2)Y.Umemura,Y.Minai,N.Koga,andT.Tominaga,J・Chem・Soc.,Chem.Commun・,

893(1994)

3)Y.Umemura,Y.Minai,andT.Tominaga,∫.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1822

(1993)

3

Page 34: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

4

4)Y・Umemura,Y・Minai,andT.Tominaga,∫.Radioanal.Nucl.Chem.,Lett.,186,

213(1994)

5)M・Tanaka,Y・Minai,T.Watanabe,andT.Tominaga,Appl.Rad.Isot.,45,501

(1994)

6)M・Tanaka,Y・Minai,T.Watanabe,andT.Tominaga,∫.Radioanal.Nucl.Chem.,

Lett.,164,255(1992)

(大学院理学系研究科 ・理学部化学専攻)

限石中の宇宙線生成核種 53M n の放射化分析

永 井 尚 生

限石は地球 かこ落下す るまで軒こ宇宙空間

において宇宙線の照射を受け.て くる。 宇

宙線はその大部分は陽子であ り,太陽系

の中では lGeV近 くのエネルギーを持 っ

た粒子が多数を占め る。 従 って限石 内部

では この高エネルギー粒子 および二次的

に生成す る粒子 (特に中性子)によ り核反

応が引 き起 こされ る。 この核反応の影響

は限石表面か ら 1m程内部 まで見 られる。

核反応 と しては高エネルギー 1次粒子な

どに.よる核破砕反応か ら,低 エネルギー

中性子捕獲反応 まで,様 々な核反応が起

こる。 また,鉄 限石 かこおいて はFe,Ni

など,石質限石においては0,Fe,Si,Mg

などの主成分が核反応の標的 と して考え

られ る。 従 って,加速器による核反応の

実験 と異な り,計算によ り核主の生成量

を見積 もることは難 しい。図 1は鉄限石

Grant中かこ宇宙線 に よ り生成 した 3Heの

分布 を示 した もので あるが, 3He存在量

が等高線で表 されてお り,中心か ら表面

をこ向か って存在量 (生成量)が増加 してい

ることがわか る。 図 2は同 じGrantの内

部 に おいて様 々な核種 の存在量 が標 的

(Fe)との質量差 が増 え るにつれ規則的

に減少す ることを示 している。 また図 2

の直線の傾 きは限石 中の深 さによ り変化

す る。 この よ うに胆石中で生成す る核種

は多様であ り, またその存在量は隈石の

種塀,大 きさ,胆石表面か らの深 さ,照

図 1 鉄隈石Grant中の宇宙線により生成した

3Heの分布 1)

00

10

1

TI叫Eo3㌔TOl

JJ

tZqO

∽i

ttZJOLJ

03ug)UOU

6 78 9 10 20 30 40

△A十4

図 2 鉄隈石Grant内部における標的(Fe)と生

成核種の質量差(△A-56-A)に対する様々

な核種の生成量の関係

Page 35: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

VOL.26NO.41996.3.25

射 を受けた時間,地球 に落下 してか らの経過時間等によ り変化す る. 隈石中の宇宙線生成

核種の存在量は多 くの要因に よ り決 まるが,中程度の大 きさの コソ ドライ ト(石質限石)に

ついては,長年の実験 データの蓄積か ら,限石の大 きさや限石中の深 さの違いによる核種

の生成速度の違いがあま り大 きくない ことが解 ったので,その平均的な値 を使い,照射年

代など,限石の履歴 についての研究に使われている。 これ らの研究で よ く使用 され るのは

希ガス及 び長半減期の放射性核種 (14C,10Be,26Al,36C1,53Mn・.・・・.)である。 この うち 14C,

10Be,26Al,36Clな どは近年開発 されたAMS(加速器質量分析法)によ り高感度測定が行わ

れてい るが, 53Mnは現在の ところAMSによる測定は試験的な範囲にとどまっていて,実

用的な測定は従来 か ら行われていた放射化分析 にた よってい る。 ここでは隈石中の53Mn

の放射化分析 について紹介す る。

53Mnは半減期3.7×106年,壊変形式はEC,noγであ り, きわめて測定が困難 な核種であ

る。 鉄限石 1g中には最高0.6dpm程度の 53Mnが存在す るので,単純 に放射能測定を行お

うとす るな らば,MnをFeか ら分離 してCrの5.4keVのⅩ線 (砂k-0.28)を測 ることになる

が,10%程度の検出効率で測定 したとして 1週間で600カウソ トに しかならない。 ここで 5qun

のような長半減期の放射性核種は近似的に安定核種 として取 り扱えるので,5qMn(n,γ)54Mn

による放射化分析 の適用 を考 えてみ る。53Mnの中性子描獲断面積は70bであ り,生成核

種 54Mnは半減期312日で835keVの γ線 (100%)を放出す るので相当感度の高い ことが予想

され,53Mnか ら54Mnに変換す ることにより検出感度が増加す ると思われ る。 実際, 1dpm

の 53Mnか らは1018cm~2の中性子照射によ り(1013cm-2sec~1の中性子束密度で約 1日照射)

約300dpmの54Mnが生成 し300倍増感 され る。 この とき同時に, Ⅹ線 か ら測定 の容易な γ

線 に変わ るとい う利点 も生 まれ る。 増感率は中性子照射量に比例 して増加す るので更に10

倍以上増加 させ るのは容易である。 ところが実際に分析を行 う時には,中性子照射量以外

に考慮 しなければな らない問題がある。 通常の放射化分析のように照射後に分離操作を行 っ

た場合,鉄限石においては主成分の鉄か ら54Fe(n,p)に よ り54Mnが生成す るので,あ らか

じめ53Mnを鉄 か ら分離 してお く必要がある。照射前 に53Mnの化学処理 を行 って も汚染の

心配はないが,収率を求め るためかこ55Mn(安定,100%)を担体 と して加 える必要がある.

さて, 55Mnを加 えるとまた次の問題 が発生す る。 それは55Mnも鉄 と同様 に55Mn(n,2n)

をこよ り54Mnが生成す ることである。 この影響を抑 えるためには加 える55Mnの量 を少な く

すれば良いのだが,鉄か らは53Mnと同様 に55Mnも生成 してお り含有量は最高0・l〟g/g程

度であるので, この量が無視で きるよ うに通常 1g前後の鉄限石に対 し0.1mg程度の担体

を加えているので この影響か ら逃げ られない。 コソ ドライ トの場合は鉄限石 と比較す ると,

Mn含有量が3000ppm前後であ り,秩(53Mn)に対す る55Mnの比率 (53Mnの生成率は鉄の含

有量に比例す る)が10倍以上 になるので55Mnによる妨害の問題は更に深刻である。 この問

題を ク リアーす るためには ¢thermal/¢fastの高い場所での照射を行わなければならない。

ただ し,一般的に炉心か ら離れ るに従い この比が高 くなる傾 向があるが,同時に中性子束

密度 は低下す るので,53Mnの放射化分析 に適 した場所は まれである。 現在 日本では,唯

一JRR3のDR-1照射孔の上部が この条件を満た している。 この場所での ¢thermat/¢fast

紘,約1000で あ り,必要 とされ る1018-1019cm~2の熱中性子照射量が得 られ るので鉄限石

の分析が可能である。 しか しなが らコソ ドライ トの分析 を行 うには この10倍,すなわち¢

thermal/¢fastが10000で熱 中性子照射量が変わ らない場所が必要である。 この条件 を満

たす場所 と しては旧JRR3のVG7-6が挙げ られ るが,現在では 日本だけでな く世界中で も

ほとんどないと思われ る。

以上述べた よ うに,53Mnの放射化分析は非常に優れたアイデアであ り,放射化分析 に

5

Page 36: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

6

おけ る極限の技術の 1つであると思われ る。ただ し,実際に分析を行 うためには,かな り

厳 しい照射条件を満たす琴所が必要であるのだが,現在 この条件を十分に満たす場所はな

い。 これは,他の長半減期宇宙線生成核種 14C,10Be,26Al,36Cl等 と比べ ると,地球上で

の生成量が少な く,地球外物質のみが研究対象 となるので応用範囲が狭 く,需要が少ない

ことも関係 してい るであろ う。 今後, 53Mnの放射化分析 に適 した理想的な場所がで きる

ことを期待 したい。

[参考文献]

1)∫.H.HorfmanandA.0.Nier,Phys.Rev.,112(1958)2112-2117.

(アイ ソ トープ総合セソタ-客員研究員)

施 設 だより

医 科 学 研 究 所 R I施 設

久保田 和 人

本研究所は, ∫R目黒駅か ら山手線の内側-バスで 5- 6分の位置にあ り,港区白金台

の住宅地域に68,450m2の敷地 を有 しています。 ここに研究所 と附属病院の施設があ り,

それぞれが個別のR I取扱事業所 と して承認 されています。

今回は,研究所のR I施設を紹介 させて頂 きます。

本研究所は,医学,生物学の領域で, 日夜最先端の研究が行われています。特に約十数

年余 り前か ら遺伝子 レベルの実験 が頻繁に行われ るよ うにな り, これ らの実験 にはアイソ

トープ標識化合物 (核種は主に32P,35S)が盛 んに利用 され,その使用量,使用研究部門お

よび使用者数が増え続けて きま した。

そ こで既存のRI施設 だけでは実験室スペースが足 りな くな り, また一部老朽化が著 し

い ことか ら新 R I施設の概算要求を昭和62年か ら6年にわた り提出 し,平成 7年 2月に新

R I施設 を含む 4号館が竣工 しま した。 これに よ りR I施設は, 1号館 (276m2, この施

設 は老朽化 が著 しく本年度末に廃止予定), 3号館 (828m2), 4号館 (2120m2)に存在す る

ことにな りま した。

3号館のR I施設は,昭和55年 と58年に建設 され, 3号館に常在す る 9研究部門が利用

してお り,一般,P2,P3レベルのR I実験室, ガソマ一線照射量,測定室,貯蔵室,

廃棄室,排気,排水設備を備えています。

4号館は地上 4階,地下 1階 の建物ですが,地階か ら2階 までがR I施設です (建物平

面図を参照)。一般 およびPl,P2,P3レベルの十分・なR I実験 スペースが使用で きる

様 にな った事は もちろん特筆すべ きことですが,地階 と 1階にR I施設の入 口があ り,地

階は雨の 日も屋根のある通路を通 って別棟か ら4号館にアクセス出来 ること,各 フロアー

に貯蔵室,低温室,暗室があること,研究部共通 スペース(機器室,測定室,低温室等)が

フロアーの中央に配置 していること,地階か ら2階のR I施設専用 エ レベーターと階段を

有す ることな.ど,利用者の使い易 さが十分考慮 されてお り,大変恵 まれた施設です。

一方, R I管理の点では,既存のR I施設を含む全 R I施設の放射線環境モニタ リソグ

システムと,非接触式 IDカセ ッ トによる利用者の入退室管理およびパ ソコンによるR I

使用管理のシステムが, 4号館 R I施設の使用開始 と同時に整備 され, 4号館 1階の放射

Page 37: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

VOL.26NO.41996.3.25

線管理室で これ らを集中管

理 してい ます。 R I排水設

備 も貯 留 槽40m8×2基 ,

希釈 槽40m3× 1基 , - イ

レベル減 衰 槽 1m3×3基

を備 えてお り,又 R I廃棄

室は, ドラム缶搬 出扉か ら

廃棄物 ドラム缶を直接搬出

で きるな ど,RI管理関係

者の要望 も十分取 り入れた

理想的な施設です。

4号 館 新 R I施 設 は ,

RI利用者 お よび管理関係

者の長年 の夢 が実現 した施

設であ り, この両者が協力

し合い,既存 のRI施設 と

共 に模範的な施設運営が行

われ ることを願 っています。

新施設を建てるかこ当た り,

多 くの方 々をこご尽力, ご協

力を頂 きま した事を, この

場 をか りて深 く感謝致 しま

す。

(医科学 研 究所 放射線 管

理室)

4号舘 地下 ⊂=コR l管理区域

てI(_地下__且32-㍗捷7ki受庖 R l美戟 至 RL英_%室

.Ejp.S

レ:_l Lt_機械室 \l /..i_l Lt_機械室 \l /..i

4号会官 1階 ⊂:=:コR H皆逢区域

4号館 2階 ⊂=コ R l管理区域

Rl実牧童EF召ry --.7..ぺP2実験室 P3実挨室′ 倉庫 P3実額室

L,.lrI-.≡二く..廟庫 函 : ぺノ..\ 宝 _二>,く

l附 肝 倉庫IF 「D 軌吻 ,「 七 . 室 非常口㌔/A./\

鯨 -

機器室 /へ. L L \∫ \/… し、.帽帽壷 .--rm警∫ 佐渡室 測定室 ㌔へ/\ 」暗室

「 _.___丁 .ヽ′ /

~/ 廊下_,fz<1人 ′′. 、用宝

ノ じTi.J凶 I.-.\.∫/. .ltJ′′、 /̀\; ~ ∫一

7

Page 38: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

8

T0 P ICS

れんとげん投影写裏帖

清 水 祭

(平成 7年12月中旬記)

Wilhelm C'6nradRontgen(1845-1923)が ドイツのWIdrzburg大学で1895年11月 8日の

夕にⅩ線を発見 してか ら今年は丁度100年 になる。 世界各国各地で盛大な記念学会や行事

が行われた。 この大発見は更に 2ケ月の実験 を経て,1896年 1月 1日に彼の友人に知 らせ

て,世に公表 された。我 が国には 2月末頃 この発見が伝 え られ,東京帝大,旧制一高の物

理学教授達に よって直ちに実験に着手 され, Ⅹ線写真が撮 られた。

一高の山 口鏡之助,水野敏之丞の両教授は 「余等 レソ トゲ ソ氏の発見を聞 きしや直に第

一高等学校物理学実験室に於て Ⅹ放射線に就 き実験を試み又多少其の作用に就て も研究を

なせ り。依て実験の方法及び今 まで得たる結果を記述せん」3月 よ り4月にかけての仕事

である。成果は本文25頁 と,その後にⅩ線投影写真16枚を示 し,「れんとらずん投影写真帖」

と題す る菊版30頁の小冊子 と して同年 5月15日付で 日本橋の丸善 よ り第-高等学校蔵版 と

して発行 された。 これは本邦 に於シナるⅩ線実験研究の噂矢である。 この報告については 1

ケ月半後のNature,Vol.54,July2(1896)p.205に,

AseriesofsixteenreproductionsofphotographsobtainedbymeansofR'6ntgenrays,

togetherwithtext(inJapanese)explanatoryofmethodsbywhichtheywereobtained,

hasbeenreceivedfrom Y.YamaguchiandT.Mizuno,ofTokioUniversity.The

photographsaremuchlessdistinctthanthoseobtainedsincetheintroductionofthe

focustube,buttheyneverthelessshowthatJapanmeanstokeepinthevanofscientific

prOgreSS・

と報 じられている。 極東 の小国での科学研究が西欧に伍す力を既をこ持 っていることに内心

驚いた ことが この文面 よ り察せ られ る。

この貴重 な報告書は100年近 く東大教養学部構内の旧一高の資料室に うず もれていた。

3年前に一高の-卒業生 (昭和22年卒業の市川龍資氏)が受け取 ってない卒業証書を探 しに

行 って偶然発見 した もので,我国の科学史上重要な うず もれていた文献 が,約100年経 っ

て再び 日の 目をみ るVL至 った0

-万,京都 においては,1878年 (明治11年)にStrasbourgのAugustA_E.E.Kundt教授

の許に留学 した村岡範為馳は同 じ研究室で助教授を していた レソ トゲ ソに約半年間教えを

うシナたが, Ⅹ線の発見が伝え られた当時は第三高等学校の教授であったO彼 も直にⅩ線の

実験 を試みたが装置の不備のため思 うにまかせなか った。当時Berlinにあった京都府立医

学専門学校教諭,笠原光輿 よ り真空度のよいCrookes管 を入手す ることがで き,二代 目島

津源蔵の協力を得て,水野,山 口両氏に遅れ ること数ヶ月で,1896年10月10日に初めて鮮

明なⅩ線写真を得た。村岡は京都府教育会の要請で 「レン トゲン氏 Ⅹ放射線の話」を 7月

9日かこ講演 している。 これは 8月末 日に47頁の冊子 と して京都の村上勘兵衛書店 よ り出版

された。その冊子は, Ⅹ線,陰極線に関す る当時の欧洲の物理学界の動勢を述べたもので,

我国に於け るこの分野の最古のまとまった文献である。

去 る11月 4日京都 に於て 「レソ トゲ ソのⅩ線発見100周年記念京都 フォー ラム」に際 し

ては, ドイツよ り2名の斯界の碩学を招待 して,主 と して医学方面での100年間のⅩ線利

Page 39: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

VOL.26NO.41996.3.25

用の進歩 を き くと共に, レソ トゲ ソ

の業績,人物 を想起 し,Ⅹ線発見後

数 ヶ月以内に我 国でいち早 くⅩ線実

験 を した水野,山 口,村岡の三先生

の努力を偲 び,その偉業を この際広

く国内外 に知 らすために, Ⅹ線発見

の数 ヶ月後 に発刊 された上記 の 2冊

子 を往時の ままの体裁で複製 をつ く

り, フォー ラムに参集 された方並び

に この貴重 な文献 の複製を快 く許可

して下 さ り協力を賜 った関係者の方々

をこ贈呈 したのであ る。 ドイツ国内各

地 の レン トゲ ン線 の大学や博物館 に

も贈呈 した。折 をみて これ らの二小

冊子 を播 いて先人の苦心 を偲 んでい

ただ きたい。

(京都 フ ォー ラム ・日本 アイ ソ トー

プ協会)

(編集委員会注 :清水祭先生 よ りア

イ ソ トープセ ンター図書室に も上

記 2冊 ご寄贈 いただ きま した。)

蛙 -?JSL ま ロ

「れんとげん投影写真帖」表紙及び X線写真の例

9

Page 40: 東京大学アイソトープ総合センター · 2009. 2. 5. · issn0916-3328 東京大学アイソトープ総合センター vol.26no.1 1995・6・25 後退をおそれずに研究を

10

●センター日誌

教育訓練 の実施

平成 8年 1月31日~ 2月 2日 理学部生物化学科学生実習

2月 5日~16日 薬学部薬学科生理化学教室学生実習

●委 員会だよ り

○運営委員会 平成 7年12月18日(月)開催

○ セ ンターニ ュース編集委員会 平成 8年 2月 7日(火)開催

○運営委員会 平成 8年 3月18日(月)開催

東京大学アイソ トープ総合センターニュース

目 次巻 頭 言

25年 目のアイ ソ トープ総合 セ ソタ-

研究紹介

ナノ空間に合成 された鉄錯体のキ ャラクタ リゼーシ ョン :

メスバ ウア-分光法 によるアプ ローチ

限石中の宇宙線生成核種 53Mnの放射化分析

施設 だよ り

医科学研究所 R I施設

TOPICS

れん とげん投影写真帖

セ ソタ- 日記

委員会だ よ り

富永 健 - 1

薬袋 佳孝 - 2

永井 尚生 - 4

久保 田和人 - 6

清水 柴 - 8

編集後記

A 「カウン ト数 が nの ときには n±舟と して測定値を報告す るんだ った よね。」

B 「そのとお りだ。放射線 の計数値はポ ワ ッソソ分布 に従 うか ら分散 と平均は等

しい。だか ら 1αの誤差 をつけて書 けば n±舟 ,た とえば測定値 が2500な

ら2500±50とい うことだ。」

A 「そ うだ よね。 さっき測 った試料 は10分・問で カウン ト数が 0だ った。だか ら0

±ノ勺で 0±Ocpm。 Ocpmで もいいけ ど誤差 まで 0だ。」

B 「バ ックグラウン ドがあ ってそれを引いて 0なん じゃないのかい ?」

A 「いや閲値 を高めに設定 して るか らバ ックグラウソ ドも30分・問で 0だ った。だ

か らほんとに 0± 0 。 誤差 0の究極 の測定 とい うことになるんだ よ。」

B 「そ うかなあ。 試料 の放射能 が 0で 1(7も 0, 2αも 0 。 相対誤差 は 0/0-

-- ?」

A 「考 えて見 るとこの場合だモチじゃないんだ。放射線 はパル ス状 に来 るか ら, ど

んな測定 を していて もた また まパルスとパルスの間だけ見て ると, 0±0で

誤差は 0だ。」 (久保 謙哉)

東京大学 アイ ソ トープ総合 セ ソタ-ニ ュース VOL.26NO.4 1996年 3月25日発行 編集発行人 高橋 文雄

〒113東京都文京 区弥生 2丁 目11番16号 東京大学 アイ ソ トープ総合セ ソタ一 ・電代表 (3812)2111内線2881